研究課題/領域番号 |
26670183
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
地主 将久 慶應義塾大学, 医学部, 特任准教授 (40318085)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 癌 / 代謝 / 免疫 / IDH(R132H) |
研究実績の概要 |
がん細胞代謝特性による腫瘍免疫応答、炎症発癌への影響を検証するため、本研究課題では、がん細胞に特異的な代謝酵素活性産物としてIDH(R132H)による2-HG活性に伴うHIF-1α制御活性による炎症シグナルについて、これが腫瘍内ミエロイド細胞の恒常的炎症シグナル誘導に及ぼすインパクトを、InflammasomeおよびIL-1β産生など炎症カスケード活性変化や、MDSC、マクロファージなどミエロイド細胞分化誘導、という主要な免疫抑制、炎症発癌経路に焦点をあてて検証した。IDH (R132H)活性変異ベクターを導入されたヒトグリオーマ細胞は、コントロールと比較して有意にHIF-1αの転写、翻訳活性が増強していた。さらに、HIF-1依存性にIL-1βやIL-6など多様な炎症性サイトカインの産生増強が認められた。このIDH(132H)導入グリオーマ細胞培養上清添加刺激により、CD14陽性ヒト単球はCD68陽性マクロファージやCD33+HLA-DR-low MDSCへの分化誘導を認めた。特にMDSCとの共培養により、CD4+, CD8+Tリンパ球の増殖能や、IFN-γ産生能、およびグリオーマ細胞障害活性能の抑制を認めた。以上より、IDH(R132H)活性変異が、HIF-1α誘導活性を介した炎症応答惹起を介して、今後はin vivo aminal modeilでの検討やヒト癌検体におけるIDH(R132H)変異と腫瘍内免疫細胞サブセットや炎症シグナル活性、および予後相関についての解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画予定であったIDH活性変異によるがん細胞中のHIF活性化や炎症シグナル変化、およびParacrineな免疫抑制誘導等ほぼ仮説通りに研究目的を達成できている。ただし、IDH(132H)活性に伴う2-HGの測定系などが確立できていないことが課題として挙げられる。さらに、当初1年目の研究達成目標に掲げていた、PKM2代謝経路を介した発癌経路については、機能解析には至っていないが、PKM2ベクターの作成や導入細胞株の作成、測定系の確立などは完了しており、次年度に向けた準備については概ね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
PKM2系についてはIDH(R132H)と同様にin vitro機能解析を遂行する。さらに、IDH1(R132H)、PKM2発現改変、あるいはPKM2遺伝子欠損膵がん細胞を対象に、腫瘍細胞のOrthotropic移植モデルを作成する。具体的には乳がん細胞は皮下脂肪、大腸癌は脾注肝転移モデル、神経膠芽腫は頭蓋内投与による腫瘍形成を行う。さらにPKM2欠損KRAS G12V-TG自然膵癌発症マウスにおける腫瘍進展能をコントロール群と比較検証する。免疫機能解析のために、腫瘍周囲ミエロイド細胞、Tリンパ球を主要な解析対象として、免疫学的解析(腫瘍内ミエロイド細胞浸潤、活性の検討, 腫瘍血管新生能など)を総合的に検証する。
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