研究課題
一般的な放射線治療と同様に2 Gy/日の分割照射を1月以上行っても増殖できる臨床的放射線耐性(CRR)細胞の放射線耐性獲得機構とがん幹細胞性について検討した。親株細胞とCRR細胞におけるがん幹細胞の含有率を比較した。がん幹細胞は高いALDH活性を示すため、ALDH活性をフローサイトメーターで検出した。親株とCRR細胞で高ALDH活性を示す分画が検出されたヒトがん細胞3株 (SAS、HepG2、A549)では、親株の高ALDH分画は14-40%の範囲であり、がん細胞株によってがん幹細胞の含有率は異なっていた。ただ、親株の高ALDH分画の割合とCRR細胞の樹立のしやすさに相関は見られなかった。さらに、全ての親株は1.5 Gy以上の分割照射線量に対して生存できないために、親株から直接CRR細胞を樹立することはできなかった。一方で、樹立したCRR細胞では細胞株によらず高ALDH分画が増加しており、増加した割合は5-30%の範囲で細胞株によって異なっていた。CRR細胞の作成には0.5ないし1 Gy/日の事前分割照射による放射線獲得耐性 (ARR)形質の誘導が必須であることを明らかにした。そこでA549細胞で1.5 Gy/日の分割照射に対して分裂・増殖できるARR細胞を作成し、ALDH活性を調べたがCRR細胞のように高ALDH分画の上昇はARR細胞では確認できなかった。すなわち、CRR細胞は親株で検出された高ALDH分画が選択・濃縮されるという単純な機構ではないことが示された。A549由来のCRR細胞を用いて分割照射下で生存コロニーを形成させ、個々の生存コロニーにおけるALDH活性を蛍光顕微鏡画像で観察したところ、一部の生存コロニーはALDH陽性と陰性細胞がまばらに存在する混合集団であったが、その他の多くの生存コロニーはALDH陰性細胞のみから形成されていた。以上の結果より、CRR細胞は必ずしもがん幹細胞に依存する形質ではなく、非がん幹細胞にCRR形質が誘導されることによって放射線耐性が誘導される経路が示された。
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