研究課題
本研究の目的は、がん細胞の集団的浸潤の分子機構を解明することである。前年度までの実績の概要に記載したように、本研究はがん細胞集団のleading cellに特異的な遺伝子発現のパターンの解明を目指して実施された。モノレイヤーカルチャーモデル(Kato et al., Cell Reports, 4:1156, 2014)とスクラッチアッセイで時間依存的に発現が変動する分子群を網羅的に解析し、二つの実験で共通して発現が上昇する膜分子群を選択した。選択された数種類の分子群について肺がん組織における発現を免疫染色で確認したが、いずれもleading cell特異的な染色像は得られなかった。抗体の特異性あるいは感度の問題も否定できないが、最終的にこれらの分子群の生物学的意義についての解明は難しいものと考えられた。現在、上記以外の分子群について検証を進めている。一方、神経芽細胞の集団的移動の制御分子Girdinの結合分子群の同定により、がん細胞の集団的浸潤の機序を解くというアプローチでは、新規Girdinの結合分子としてbeta-cateninを同定した。Girdinおよびcateninのそれぞれの結合責任ドメインをプルダウン法により同定した。cateninはE-cadherin等の細胞間接着分子の細胞内動態を制御する分子である以外にWnt経路の制御因子でもあることが知られている。Girdinの発現抑制がcateninの細胞内局在に与える影響を検証したが、明らかな差異は観察できなかった。一方、cateninのリン酸化状態およびcanonical Wnt経路に与える影響が観察された。これらのデータと細胞の集団的移動の関連について検証をする必要があると考えられた。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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