研究課題/領域番号 |
26670190
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
坂下 直実 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (90284752)
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研究分担者 |
堀口 英久 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (40304505) [辞退]
西辻 和親 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (40532768)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 術後性肺静脈狭窄症 / 血管平滑筋 / 酸化ストレス / ヘムオキシゲナーゼ1 / 内膜増殖 |
研究実績の概要 |
総肺静脈還流異常症をはじめとする先天性心疾患の根治的治療には外科的な血行動態修復術が行われるが、これらの手術の合併症として術後性肺静脈狭窄症が生じることがある。この合併症は原因不明であるとともに一旦発症するとほぼ全ての患児が死亡する予後不良な疾患である。われわれは術後性肺静脈狭窄症ならびにくも膜下出血後に生じた椎骨動脈解離性動脈瘤の剖検症例解析を踏まえて以下の検討を行った。これらの病変の本態は外膜出血誘発性内膜狭窄病変にあると考えて肥厚した内膜の組織構築を検討したところ、肥厚した内膜には血管中膜に由来する平滑筋が遊走していることが明らかとなった。これらの平滑筋は酸化ストレスマーカーである8-OHDG陽性を示していた。外膜出血が生じた場合赤血球に含まれるヘムは局所の細胞に誘導されるヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)によって処理される必要があるが、病変部の血管にHO-1陽性細胞は認められなかった。このことから外膜出血誘発性内膜狭窄症の原因は病変血管におけるHO-1誘導不全が原因との仮説を立ててin vitro実験を行った。培養平滑筋細胞にヘムを添加するとERKとNF-κBの活性化を経て平滑筋細胞の増殖が生じるとともにSTAT3の活性化を経てHO-1が誘導される。通常の血管ではヘム暴露後に誘導されるHO-1が酸化ストレス誘導物質であるヘムを有効に消去して酸化ストレスから生体を防御しているものと考えられる。現在、HO-1阻害剤を添加してヘムの消去を阻害した場合の酸化ストレスの増強効果と平滑筋の遊走・増殖能をin vitroにて検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究を担当する予定であった大学院生が体調不良のために休学し、研究テーマの変更を求めて別の研究室に移動したため研究が9か月にわたって中断した。現在、別の大学院生が新しく研究に取り組んでおり、今後の研究の展開が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在行っているin vitro実験を夏までに完了して術後性内膜狭窄症の症例報告として論文を発表すると同時にin vivo実験を行うためにHO-1ノックアウトマウスを導入して外膜出血誘導内膜狭窄モデルを作成するとともに各種ラジカルスカベンジャーや骨髄移植モデルを用いて外膜出血による活性酸素障害を軽減して内膜狭窄病変を軽減できるかどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究をテーマとして学位取得を計画していた大学院生が体調不良を理由に研究室を移籍し、9か月にわたって研究が行えない事態となった。平成27年度より新しい博士前期課程の大学院生が本研究に従事することとなり、現在精力的に実験に取り組んでいる。
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次年度使用額の使用計画 |
培養平滑筋細胞を用いた実験を9月までに終了し、その後はヘムオキシゲナーゼ1欠損マウスを用いたin vivo実験に取り組む予定である。遺伝子改変動物の導入、管理、維持、ならびにin vivo解析のための研究ツールの購入費用に助成金を活用する予定である。
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