研究課題
本研究は術後性肺静脈狭窄症を来して死亡した総肺静脈還流異常症患児の病理解剖解析に端を発し、手術操作に伴う出血がヘムオキシゲナーゼ1(HO-1:遊離ヘムを分解して抗酸化物質ビリベルジンと一酸化炭素を生成する酵素)誘導不全により酸化ストレスを介して異常な内膜肥厚性病変をもたらすという仮説を検証するために行われた。まずマウス平滑筋細胞株(P53LMACO1)にヘムを添加したところNADPHオキシダーゼの活性化と酸化ストレス誘導とともにERKとNF-κBの活性化が生じ、細胞増殖と遊走が確認できた。また、ヘムの添加によりSTAT3を介したHO-1の誘導が生じることも明らかとなった。外膜出血関連内膜肥厚性病変を示すヒト動脈を用いて免疫組織化学的検討を行ったところ、内膜肥厚性病変では酸化ストレスマーカーである8OHDG陽性像が認められたがHO-1の発現は認められなかった。これに対して内膜肥厚を欠く血管では主として外膜にHO-1陽性細胞(主としてマクロファージ)が認められる一方で8OHDG陽性細胞はほとんど認められなかった。これらのデータより外膜出血に関連してHO-1の機能不全が中膜平滑筋の増殖と遊走をもたらして内膜肥厚性病変が生じる可能性が示唆された。そこで、培養平滑筋細胞にヘムとHO-1阻害剤ZnPPを添加してHO-1の機能を阻害した際の細胞増殖と遊走能を検討したが、ZnPP存在下でも酸化ストレス、細胞増殖、細胞遊走能に変化は見られなかった。また、siRNAを用いてHO-1誘導を阻害して同様の実験を行ったが細胞増殖、遊走に変化は無かった。HO-1阻害による平滑筋遊走・増殖能に変化が見られなかったため研究計画を変更し、粥状動脈硬化病変におけるHO-1陽性細胞の解析を行っている。その結果、粥腫内の泡沫化マクロファージはHO-1発現抑制を受けて炎症性サイトカインを産生していることが示された。
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