研究課題
制御性T細胞は自己免疫寛容の維持に重要なCD4+リンパ球の亜集団で、末梢のCD4+リンパ球の5-10%を占め、転写因子Foxp3とCD25を発現する。加齢に伴う免疫低下は、加齢とともに増加する制御性T細胞による免疫抑制が一因である(Nishioka T,…,Yamazaki S et al. J Immunol 2006)。高齢化社会の日本では、高齢者に対する医療費の急増が社会問題となっている。高齢者の免疫低下は、肺炎などの感染症、発癌をもたらす。本研究では、高齢者の免疫機能を上げる為に、加齢に伴う制御性T細胞による免疫抑制を解除する方法への貢献を目指し、研究を遂行し、下記のデータを得ている。1)加齢による制御性T細胞のリンパ組織への集積のメカニズムの解析 加齢で増加する制御性T細胞のケモカインレセプターをFACSなどで解析した。その結果、加齢で特異的に増える制御性T細胞のサブセットのマーカーになる可能性のある分子の同定ができた。タンパクレベルの解析と遺伝子レベルの解析を遂行中である。機能的にも加齢で末梢に増加した制御性T細胞は若いマウスの制御性T細胞に比べ、移動しにくいというデータも得た。2)加齢による制御性T細胞の増殖における樹状細胞の役割の解析 特定の樹状細胞の増加が制御性T細胞の誘導に関与している事を検索するため、加齢マウスで増加している樹状細胞のサブセットの解析を現在行っている。ある樹状細胞が増えているという予備データまで得る事ができている。
2: おおむね順調に進展している
老化マウスという特殊なマウスを使用するにもかかわらず、計画に沿って順調にデータを得る事ができている。すでに加齢マウスの制御性T細胞に有意性に多く発現しているケモカインレセプターを検索する事ができた。さらに、FACSなどの解析で、加齢マウスの制御性T細胞と若いマウスの制御性T細胞の機能の相違についても解析しつつある。リンパ節、脾臓などのリンパ組織のみでなく、皮膚においても解析を行いつつある。
老化マウスは作成に時間がかかり、購入費も高価であるため計画的な実験が必要である。今後は樹状細胞の解析、樹状細胞サブセットの解析を重点に行う予定である。慎重に計画を立て、上述の研究を継続し、早急に論文として成果を発表する予定である。H27年の学会においても発表予定である。
所属長としての新しい研究室への異動に伴い、研究成果の発表である研究室のホームページを作製する必要があったため、予算を残した。
研究成果を社会へ発信するため研究室のホームページ作製費用として使用する計画である。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 4件) 備考 (2件)
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http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/w3med/labo/immune.dir/index.html
http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/derma.dir/index.htm