研究課題
日本住血吸虫はその生活史に中間宿主を要するため、既に確立された方法によるゲノム遺伝子の改変個体を作成することが困難であり、遺伝子個々の機能を解析することが困難であることが研究遂行上の障害であった。その解決を図るために、日本住血吸虫へのレンチウイルスを用いた遺伝子導入を試みるために、GFP遺伝子を含んだベクターの遺伝子導入を検討した。in vitro条件下で、ベクターをパッケージングしたレンチウイルスを異なった発育ステージの住血吸虫と共培養した結果、成虫、虫卵、幼虫(シストトミュラ、スポロシスト)のすべてにおいて、mRNAの遺伝子発現は確認された。またそれが確かにゲノムに挿入された遺伝子に由来することを確認するために、成虫やシストソミュラについてトランスポゾン配列を用いたAnchor-PCR法により調べた結果、ゲノムへのベクター遺伝子の挿入も確認できた。しかしながら、GFPによる発光は確認できず、遺伝子産物としてのタンパク質の発現には至っていないことがわかった。タンパク発現に至らなかった理由を検討するために、mRNAの配列を調べた所、フレームシフト等の変異は確認できずにインタクトな配列情報を有していた。以上のことから、日本住血吸虫における外来遺伝子の発現には翻訳抑制が起こる可能性が考えられた。これが事実であるのなら、レンチウイルスによる遺伝子導入系は困難であることになるが、一方でmRNAの発現が見られていることから、外来ベクターによる誘導型RNAiによる遺伝子発現抑制等の手法は可能であると考えられ、そのことは新しい遺伝子ノックダウン技術になりうつことが考えられた。本研究を通じて、従来は困難であった遺伝子改変日本住血吸虫の作製に新たな方法論の展開が得られたものと考えている。
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Parasitology International
巻: 64 ページ: 24-31
10.1016/j.parint.2015.01.005