研究課題/領域番号 |
26670199
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
岩永 史朗 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20314510)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 感染症 / マラリア |
研究実績の概要 |
平成26年度にはENU処理による遺伝子変異条件の決定し、ENU変異マラリア原虫株の樹立を行った。その結果、原虫(熱帯熱マラリア原虫3D7株)の70%が死滅する条件においてENUによる変異を持つ変異原虫集団を獲得することに成功した。続いて得られた原虫集団をメフロキン処理し、生存した原虫集団から限界希釈法により変異原虫をクローン化してENU変異メフロキン耐性原虫クローンを得た。次にこのクローンついて全ゲノム配列及び遺伝子変異(SNPs)の決定を行った。実験にはSOLID5500system(ABI社製)とION PROTON(ABI社製)を用い、得られた配列情報を熱帯熱マラリア原虫3D7株のゲノムと比較して変異を同定した。SOLID5500systemにより配列決定した場合はLifeScopeプログラムを用いてMappingし、更に同プログラムを用いてSNPsをコールした。一方、ION PROTONにより配列決定した場合はProton TorrentサーバーにてMapping及びSNPsのコールを行った。その結果、SOLID5500systemを用いた場合は約2000個のSNPsが同定されたのに対し、ION PROTONにより配列決定した場合は約20000個のSNPsが同定され、両者の間に約10倍の違いがあることが明らかとなった。更にこれらの差がSNPsコールによるものかを検討するために両シークエンサーより得られた配列のMapping情報をもとにCLC genomic workbenchを用いてSNPsコールを行った。その結果、SNPs数の違いに大きな変化は無く、SNPsコールではなく配列決定の手法による違いが原因であることが示唆された。現在、両手法で同定されたSNPsからいくつかを任意に選択し、実際にSanger法により変異を確かめ、何れの手法が最適であるか検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は計画通りENU処理により変異原虫集団を獲得し、更にこれらに対してメフロキン処理の行い、ENU変異メフロキン耐性原虫を獲得することに成功した。当初は温度感受性が変化した表現型を示す原虫の獲得を計画していたが、試験的に行った薬剤耐性試験により変異メフロキン耐性原虫集団を獲得でき、臨床上重要性が高く且つ本研究の目的である順遺伝学的な手法の確立に使用可能であるため同原虫集団に焦点を絞り研究を展開することとした。以上のことより当該年度に目的とするENU変異集団の確立と熱帯熱マラリア原虫人工染色体遺伝子ライブラリー構築に必要な研究試料の獲得に成功したため計画は予定通りに進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まずENU変異メフロキン耐性原虫のゲノム解析を進め、SNPsを確定し、表現型に対する責任遺伝子(耐性遺伝子)の候補を同定する。既にSOLID5500system及びION PROTONによりゲノム解析を終了し、SNPsの候補の同定まで成功していることから平成27年度中に達成できると見込んでいる。一方、得られたメフロキン耐性原虫について熱帯熱マラリア原虫人工染色体による遺伝子ライブラリーを作製し、Functional Screeningによりメフロキン耐性に対する責任遺伝子を同定する。既に手法については確立済みであるため、平成27年度内に達成できると予想する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度はSOLID5500 systemとION PROTONによるゲノム解析とSNPs同定を中心に進めた。この実験はENUによる変異の導入を評価するために必須のものであり、計画していた多数のゲノム解析よりも先に確立する必要があった。その為、ゲノム解析に使用予定であった試薬用の予算に未使用が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度前半にSNPs同定法を確立し、計画通り未使用額を変異原虫のゲノム解析に使用する。
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