昨年度までにENUにより熱帯熱マラリア原虫を処理し、ランダムに変異を導入した原虫集団を得た。この集団をメフロキン処理し、新たにメフロキン耐性原虫株を樹立後、次世代シークエンサーによってゲノム上の遺伝子変異(SNPs)の決定を決定することを試みた。本年度はまず、昨年度に引き続き、SNPsを確実に決定するための配列決定条件を決定することを試みた。その結果、ABI社製Solid5500システムにより配列を決定後、Lifescopeによるマッピングを行った場合、正確にSNPsを決定することができ、約2000個のSNPsが存在することが示された。次に得られたメフロキン耐性原虫の性状解析を行った。まず、メフロキンに対する半数致死濃度(IC50値)を検討した結果、約35nMであることが判明した。ENUによる変異導入前のIC50値は約12nMであったことから、約3倍程度耐性能が上昇していることが示された。更に患者由来のメフロキン耐性株と比較した結果、ほぼ同等の耐性を示したことからENUにより獲得したメフロキン耐性原虫は臨床においても耐性を示すことが示唆された。またこの原虫よりゲノムDNAを精製し、熱帯熱マラリア原虫人工染色体を用いて遺伝子ライブラリーを原虫内に構築した。得られたライブラリーは原虫ゲノムを約10カバー程度していることが判明し、十分に耐性遺伝子のスクリーニングに使用できるものであった。現在、この遺伝子ライブラリーに対し、メフロキン処理を行い、耐性遺伝子の同定を試みている。
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