研究課題
「PfDyn2タンパクの構造と膜変形」PfDyn2タンパクの重合状態を調べた。まず、夾雑物の非常に少ない、高い精製度でタンパクの状態を調べるために、精製法の改良を行った。タンパクの安定性に影響を与えると考えられる溶液中の還元剤、2価イオンの濃度を再検討した。その結果、比活性が従来の方法と同程度であるが、安定なPfDyn2が精製できた。このタンパクを用いて、低イオン強度条件下(25 mM以下 NaCl)、生理的イオン強度条件下(150 mM NaCl)でのタンパクの重合状態をネガティブ染色を行い、電子顕微鏡にて観察した。低イオン強度及び生理的イオン強度条件下では、共に重合したと考えられるタンパク凝集体が観察された。特にGTP存在下では、低イオン強度条件下よりも生理的イオン強度条件下で大きな凝集体が存在した。この凝集体の詳細な構造を現在観察中である。PfDyn2による膜変形作用は、いくつかの製法が異なった人工脂質膜に対する効果を調べた。これら条件で、人工脂質膜を扁平化させる条件を発見した。条件の最適化を検討している。
2: おおむね順調に進展している
PfDyn2のタンパク構造や膜変形作用を調べる過程で、PfDyn2は、ほ乳類でよく研究されているダイナミンファミリーとは、異なった作用を持つ可能性を見いだした。そのため、従来の解析方法を踏襲ししつ、新しいアプローチも採用する必要がある。また、タンパク精製法を改良したことにより、得られたタンパクは、電子顕微鏡観察を用いて従来の精製法で得られたタンパクよりも構造変化がはっきりと観察された。これら精製タンパクの使用は、今後の研究の進展に大きく寄与すると考えている。このように、計画した研究はおおむね順調に進行している。
研究実績の欄で述べたが、タンパクによる膜変形作用解析については、(1)製法が異なった人工脂質膜の使用(2)精製度の高いタンパクの使用(3)新たなアプローチの採用を柱に研究を進めていく。特に(1)に関しては、大型リポソームの利用、(2)に関してはクライオ電顕の使用を試みる。
今年度に配分された金額は、該当研究に効率よく使用できた。未使用額が生じたのは、研究を遂行する過程で、予期しない新規な機構の可能性が見つかり、従来の方法を繰り返すことなく、次年度に申請する額と合わせて、新しい解析法を採用にあたる費用に充当することとしたためである。
次年度に繰り越し、消耗品として使用する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件)
Biology of The Cell
巻: 107 ページ: 319-330
10.1111/boc.201500032