研究課題
リバースケミカルジェネティクスとは「標的タンパク質に対する阻害剤をスクリーニングし、その阻害剤が生物の表現型に及ぼす影響を観察することによって、標的タンパク質の機能を明らかにすること」である。本研究は、熱帯熱マラリア赤血球期原虫においてこの手法を確立し、これまでリバースジェネティクスでは解析出来なかった熱帯熱マラリア原虫の赤血球期に発現する機能未知タンパク質の機能を明らかにすることを目的とする。そのために、近年我々が同定し、赤血球侵入に重要な役割を果たしているメロゾイトタンパク質GAMAを例にとり、その特異的阻害剤を見出すことによって、赤血球期原虫におけるGAMAの分子機能の詳細を明らかにすることを目指して本研究を開始した。まず本研究でGAMAが相互作用する原虫タンパク質を同定した。抗GAMA抗体で免疫沈降を行った結果、メロゾイト表面に局在するGPIアンカータンパク質Merozoite surface protein 10 (MSP10)が共沈した。次にコムギ無細胞系によりGAMAとMSP10を合成し、表面プラズモン共鳴によって相互作用を計測した結果両者は比較的強く直接相互作用していることが判明した。このことは、メロゾイト内の小器官から移行してきたGAMA分子が、メロゾイト表面にあるMSP10と相互作用することを示唆している。続いて当該相互作用が原虫の赤血球侵入にどのような役目を果たすのか解析するため、ハイスループットな分子間相互作用検出系であるAlphaScreenを用いてGAMA-MSP10相互作用に対する阻害剤・モノクローナル抗体スクリーニング系を構築した。今後は当該相互作用を阻害する化合物の探索、ならびにそれによってメロゾイト侵入がどのような影響を受けるのかを解析し、GAMAの赤血球侵入分子メカニズムを解明する。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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http://www.pros.ehime-u.ac.jp/malaria/