研究課題/領域番号 |
26670204
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
二瓶 浩一 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (40373344)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トリパノソーマ / 積荷受容体 / 原虫 / 小胞体 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,昨年度にトリパノソーマのゲノム上から膜タンパク質積荷受容体と推定されるp24ファミリー候補遺伝子が9種類存在することを明らかにし,この9種類がトリパノソーマの生活環によって再編し,病原性の原因となる抗原の輸送制御を行うという申請者の作業仮説に基づき,トリパノソーマp24ファミリーにおいて1種類しかないβサブファミリーが積荷認識およびα~δサブファミリー間のヘテロオリゴマー形成において中心的な役割を果たすものと予測している。酵母においてp24ファミリーのα~δサブファミリー変異株が各々表現型を示すことをわれわれの先行研究で解析しており,この方法に基づいて未知であったトリパノソーマp24ファミリーの実体を明らかにすることを目的とし,今回はp24βサブファミリーの同定を行った。トリパノソーマp24βと予想される遺伝子産物も従来のI型膜タンパク質の膜配向性を持ち,N末端配列に小胞体への移行に必要なシグナル配列,糖脂質の糖鎖認識に機能するヘリックスドメイン,輸送小胞のコートタンパク質の認識配列を有する細胞質ドメインにより構成されることが予測された。その機能を確認するためにタグ挿入法または領域欠失法により前駆体のシグナル配列が存在すること,ヘリカルドメインがそのトリパノソーマp24の機能に必須であることを明らかにした。さらに,この新規p24βに対する抗体を調製し,細胞内局在について確認を行った。トリパノソーマの小胞体およびゴルジ体周辺のマーカーは酵母や哺乳類に比べて未だ解析が遅れているため小胞体およびゴルジ体の代表的な分子と考えられるマーカーの抗体も合わせて準備した。その結果,小胞体の輸送小胞放出部位に局在するパターンを示すことを明らかにした。本結果は,未だ実体が明らかになっていない原虫の小胞体の機能および形態を理解する上で重要な結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,新設建物への移動作業等もあり,作業が止まった時期があったものの,予定していた酵母を用いたトリパノソーマ遺伝子の同定が順調に推移した。積荷受容体p24ファミリーに加え,p24と結合することが考えられる未知遺伝子産物の一つである低分子量GTP結合タンパク質の解析も進行しつつある。さらにプロテオミクス解析によりp24ファミリーと機能する表面抗原輸送に関わる因子の詳細が明らかになることが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
トリパノソーマ遺伝子の同定は酵母または直接原虫を用いることで進めていきたいが,後者を用いる場合,効率的に遺伝子を導入する装置が必要となる。さらに,トリパノソーマ原虫の病原性に関わる表面抗原の輸送阻害または原虫の生育阻害に関わる低分子化合物のスクリーニングを行うためのレポータ遺伝子を導入した原虫を準備しなければならないが,遺伝子導入装置が所内にないため,その導入技術または活性を有する低分子化合物の検出系を工夫する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の遂行は順調に推移した。効率的に作業が推移し,より安価な消耗品の利用を心掛けた為,計上した額よりも若干の未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の物品費購入に充てる。
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