研究課題
本研究では、活性酸素とNOのセカンドメッセンジャーである8-ニトロ-cGMPの生理機能について、細菌のストレス応答と宿主細胞のオートファジー誘導を中心として、宿主と細菌の共通したシグナル制御システムのクロストークという全く新しい視点で解析する。さらに、そのシグナル系の活性イオウ分子による制御機構の解明を目的とする。本年度は、細菌の8-ニトロ-cGMPシグナルに関する菌体内のS-グアニル化タンパク質の同定と活性パースルフィドなどの活性イオウ分子によるオートファジー制御の解析を行った。2次元電気泳動-ウエスタンブロットと質量分析を用いて大腸菌およびサルモネラ(Salmonella Typhimurium)菌体のS-グアニル化タンパク質の解析を行い、ストレス応答や線毛形成をはじめとした様々な機能に関わる多数のタンパク質がS-グアニル化を受けていることを明らかにした。このことから、8-ニトロ-cGMPによるタンパク質S-グアニル化が細菌のストレス応答や定着に関わるシグナル機構として機能していることが示唆された。また、各種培養細胞(マクロファージ、ヒト肺がんA549細胞など)において、活性パースルフィドの産生酵素(CBSおよびCSE)のノックダウンにより、細胞内の各種ポリスルフィドの低下に伴い、著明にオートファジーが誘導されることを明らかにした。S. Typhimuriumの硫化水素産生酵素(AsrおよびPhs)欠損株の作製に成功し、これらの菌株の培養細胞への感染実験により、細菌の硫化水素産生が感染細胞内における菌の生存・増殖に寄与していることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
研究実施計画どおり、細菌における8-ニトロ-cGMPシグナル経路の解析を行い、S-グアニル化プロテオミクスにより、シグナルに関わると考えられる各種S-グアニル化標的タンパク質の同定に成功した。また、活性パースルフィドによるオートファジーの抑制作用の解析、および硫化水素産生酵素欠損菌株の作製と感染実験にも取り組み、ほぼ当初目的に即した成果を得ることができたと考えられる。
これまでのところ、ほぼ当初の研究実施計画に沿った成果が得られており、計画変更を要するような研究上の問題はない。本年度までの成果を踏まえながら、次年度以降は活性パースルフィドの機能を中心に、細菌のストレス制御とオートファジー誘導機構について当初の計画どおりに研究を進める予定である。
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