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2014 年度 実施状況報告書

ゼブラフィッシュ感染モデルを用いた病原細菌リボソーム修飾の意義解明

研究課題

研究課題/領域番号 26670210
研究機関千葉大学

研究代表者

高屋 明子  千葉大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (80334217)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード23SrRNA / 肺炎球菌 / 23SrRNAメチル化酵素 / TEL感受性 / 修飾制御
研究実績の概要

先行研究により、肺炎球菌23SrRNAのHairpin35にあるG748はメチル化酵素RlmAIIによりメチル化され、このメチル基がケトライド系抗菌薬、テリスロマイシン(TEL)のリボソーム結合を安定化させることを見出している。本研究では、G748に隣接するU747修飾に着目した。大腸菌においてU747はメチル化酵素RlmCによってメチル化される。そこで、肺炎球菌TIGR4ゲノム上のRlmCホモログを探索したところ、Sp_1029及びSp_1901が見出された。それぞれの遺伝子欠損株の23SrRNAをLC-MS/MSにより解析したところ、野生株ではみられたU747のメチル化がSp_1029欠損株では消失していた。又、Sp_1029はU1939のメチル化にも関与していた。このことから、Sp_1029はメチル化酵素RlmCDをコードすることを明らかとした。U747のメチル化がTEL感受性に関与する可能性について、野生株及びRlmCD欠損株にA2058ジメチル化酵素Erm(B)を導入し薬剤感受性を調べた。RlmCD欠損株はTELに耐性となり、U747修飾がTELのリボソーム結合に関与することが示された。この機構について、RlmCD欠損株におけるG748メチル化レベルを調べたところ低下していた。G748メチル化レベルはRlmCD欠損株でRlmAIIを過剰に発現させることにより回復し、TEL感受性も野生株と同程度を示したことから、RlmCDによるU747メチル化はRlmAIIによるG748のメチル化を促進させることが示唆された。このことを、精製RlmAIIタンパクを用いたin vitroメチル化解析で明らかとした。23SrRNAのある修飾が他の修飾酵素の活性調節に関わるという報告はほとんど無く、今回の結果はリボソーム修飾の新たな生合成制御機構を示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成26年度の予定は、①肺炎球菌23SrRNA Hairpin35修飾に関わる酵素の同定とTEL感受性への影響 ②Hairpin35修飾による肺炎球菌病原性発現関与を調べるためのゼブラフィッシュの感染実験系の確立 ③リボソームプロファイリングアッセイに向けたリボソーム精製法の検討であった。①については、「研究実績の概要」にあるように、メチル化酵素RlmCDを同定し、この修飾が隣接するG748メチル化酵素RlmAIIの活性に影響することを新たに見出した。この内容については現在論文投稿中である。②のゼブラフィッシュ感染モデルを確立するために、菌の接種法などを検討した。複数のゼブラフィッシュに安定に菌を接種する必要があるため、菌の調製方法などについて比較的使用しやすい黄色ブドウ球菌を使って検討した。条件検討がほぼできたため、今年度は肺炎球菌の実験が可能であると考えている。③については、①のin vitroのメチル化活性を調べた際、リボソームの粗精製が必要であったため、その過程で調製法を検討した。リボソームは回収できたことから、その精製物に含まれmRNA量について検討を始めたところである。

今後の研究の推進方策

①肺炎球菌23SrRNAメチル化の生理的意義の解明:平成26年度に見出したU747/U1939メチル化酵素RlmCDとG748メチル化酵素RlmAIIの欠損株の性状を解析することにより、肺炎球菌における23SrRNAメチル化の生理的意義の解明の一端を明らかにする。各遺伝子欠損株はTEL感受性に関与しているにも関わらず、臨床分離肺炎球菌からこれらの変異の報告はされていない。そのため、これら欠損株は環境依存的に生育が阻害されている可能性が考えられる。そこで、様々なストレス条件下における生存について、野生株と各欠損株で比較検討し、また、現在条件を検討しているゼブラフィッシュ感染モデルを使って、宿主内における生存について野生株と比較する。また、肺炎球菌が産生する病原因子の産生について野生株と比較する。
②リボソームプロファイリングアッセイ:23SrRNA Hairpin35はペプチド合成を行うペプチジルトランスフェラーゼセンター近くに位置していることから、ペプチド合成制御に関わることが考えられる。そこで、野生株及び各欠損株のリボソームからmRNAを調製し、ペプチド合成について検討することで、メチル基がペプチド合成に与える影響について検討できると考えている。

次年度使用額が生じた理由

これまでに肺炎球菌における内因性23SrRNA修飾酵素に関する研究報告が少ないことから、研究計画当初は数多くの遺伝子を調べる必要があると考えていた。今回、修飾酵素を数少ない遺伝子欠損株から同定でき、また、同定したメチル化酵素欠損株が非常に興味深い性質を示したため、この酵素の性状解析に集中した。この同定の過程でLC-MS/MSの解析が必須であり外部機関の解析受託サービスを考えていたが、共同研究により解析できた。この成果について論文投稿中であり、英語校閲費及び論文投稿料が来年度支払いとなった。

次年度使用額の使用計画

現在投稿している論文のリバイス時の英語校閲費及び論文投稿料に使用する。また、今回見出した内容は非常に興味深いため、学会での発表を積極的に行う予定である。
現在予定しているリボソームプロファイリングアッセイでは、次世代シークエンスでの複数の解析が必要であり、この解析費に使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014 その他

すべて 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 肺炎球菌のテリスロマイシン感受性に寄与するrRNA内因性修飾2014

    • 著者名/発表者名
      庄司竜麻,高屋明子,木村聡,鈴木勉,佐藤慶治,山本友子
    • 学会等名
      第97 回日本細菌学会関東支部総会
    • 発表場所
      東京ドームホテル
    • 年月日
      2014-10-30
  • [備考] 千葉大学大学院薬学研究院ホームページ

    • URL

      http://www.p.chiba-u.jp/lab/bisei/index.html

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公開日: 2016-05-27  

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