細菌リボソームの23SrRNAは活性中心であるペプチジルトランスフェラーゼ活性中心(PTC)および新生ペプチド排出トンネル(NPET)が内因性修飾酵素により多くの修飾を受けるものの、その生理的機能については不明である。昨年度までに、病原細菌の一つである肺炎球菌の遺伝子を解析し、NPETに位置する23SrRNAのHelix35のU747をメチル化するRlmCDを同定した。RlmCDによるU747のメチル化は隣接するG748をメチル化するRlmAII活性を促進することで、効率的なG748メチル化に関与することを新たに見出した。又、RlmAII活性消失に伴うG748メチル基の欠如が、抗菌薬テリスロマイシン高度耐性をもたらすことを見出している。更に、臨床から分離されたリネゾリド耐性ブドウ球菌を解析したところ、PTCに近接するA2503をメチル化する酵素RlmNにアミノ酸変異が生じていた。修飾の異なるリボソームは抗菌薬や感染状態の環境変化に応じたたんぱく質合成に適応している可能性を考え、肺炎球菌RlmAII発現株とRlmAII欠損株の性状を解析した。感染における比較をするため、ゼブラフィッシュを用いる感染実験系の確立を試みた。しかしながら、定量的な比較が困難であった。そこで、in vitroでの比較実験を行ったところ、RlmAII欠損により肺炎球菌の病原性発現に関与する莢膜の合成が影響される結果を得た。G748はリボソームストーリングに関与するリボソームたんぱく質L22のアミノ酸と相互作用することでNPETの構造保持に関与しペプチド合成を制御するため、RlmAIIのメチル化はG748の空間的制御に関与することが考えられる。
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