研究課題
本研究では、肺炎クラミジアAR39株に感染することが知られているクラミジアファージAR39の染色体を遺伝子工学的に改変し、また大腸菌のタンパク質発現系を利用することで、目的の遺伝子を肺炎クラミジアに導入するあるいは目的の遺伝子発現を減弱させることのできる組み換えクラミジアファージを作製することを目的とした。本組み換えクラミジアファージ作製系が構築されることで、試験管内では発育増殖させることができない肺炎クラミジアの遺伝子操作が可能となり、異形肺炎における肺炎クラミジアの病原性あるいは病原性に関係するエフェクター分子の同定に繋がることが予想された。この目的のため、本研究では①PCR法により増幅したクラミジアファージAR39のゲノムのクローニング、②クローニングしたクラミジアファージAR39ゲノムを用い各ファージタンパク質の発現確認、③大腸菌とクラミジアとの間で遺伝子をやり取りすることのできるシャトルベクターの作製について研究を進めた。上記①については全ゲノム配列をクローニングすることができたが、②Genbankに収載されているORFをもとにすると、一部のファージタンパク質の発現は確認できなかった。Genbankに収載されているORFは文献から推定されるORFとは必ずしも一致しておらず、正しいORFではなかった可能性が示唆された。③についてはクラミジアファージゲノムの複製に必須だと想定されているORF4が不溶性蛋白質として大腸菌中に発現され、機能を発揮しなかったことからシャトルベクターの複製開始点を特定することが出来ず、本研究期間中には作製することができなかった。以上のことから、本研究では当初の目的を達成することができなかったが、クラミジアファージの全ゲノムを一本のmRNAとしたファージタンパク質の一括発現させ、ファージゲノムの欠失変異の作製などによってさらに検討を行い、組み換えファージ作製系の構築を目指したい。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件)
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