研究課題/領域番号 |
26670218
|
研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
山本 章治 国立感染症研究所, 細菌第一部, 主任研究官 (80469957)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 細菌間コミュニケーション / 調節性ノンコーディングRNA / RIVET |
研究実績の概要 |
本研究の主な目的は,細菌におけるRNAの伝達性を安定に記憶するメモリを開発することである。本年度はコレラ菌のON型rncRNAの一つであるTfoRを指標として,昨年度構築した検出系を評価した。この系はRIVET(Recombination-based in vivo expression technology)をベースにしたものであり,以下の二つの要素から構成される。一つは特異的なrncRNAを検出するセンサーである。これにはTfoRの標的遺伝子tfoXをリゾルベース遺伝子tnpRに翻訳融合したプラスミドを用いる。二つ目は検出情報を記憶するメモリであるが,これにはTnpRによる不可逆的なDNA切り出し反応を利用する。つまり,TfoRが存在する場合に限ってtfoX::tnpRの翻訳が活性化され,産生されたTnpRが染色体上のres-cat-sacB-res遺伝子カセットの切り出しを触媒する。これにより最終的にはクロラムフェニコール感受性・スクロース耐性(CmS/SucR)の表現型が付与される。メモリ株をセンサープラスミドで形質転換させ,TfoRの発現が活性化するキチンオリゴ糖存在下で培養したところ,CmS/SucRコロニーの出現率が著しく不安定であった。そこでtfoX::tnpR翻訳融合をメモリ株の染色体に導入し,同様の解析を行ったところ,CmS/SucRコロニーの出現率は安定なものの,TfoRが発現誘導されない条件下でのバックグラウンドが高かった。今後はいかに検出系のバックグラウンドを低下させるかが課題である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当該年度の目標は,1)ON型rncRNA検出系の感度評価,2)伝達性を有するON型rncRNAのスクリーニング,3)OFF型rncRNA検出系の構築と感度評価,4)伝達性を有するOFF型rncRNAのスクリーニング,5)スクリーニングされた候補RNAの可視化,というものであった。このうち,1)の実験を集中的に行ったが,検出系のバックグラウンドが予想以上に高く,年度内に評価を行うことが困難になった。これに伴い,残りの解析を十分に行うことができなかった。したがって,「遅れている」と自己評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度であるため今後はON型rncRNAの解析に焦点を当てる。まず,検出系に用いられるリゾルベースTnpRの認識部位resを変異型にすることでバックグラウンドを低下させ,理想的な評価基盤を構築する。評価項目としては,1)TfoRを発現させない場合,2)菌体内でTfoRを発現させた場合,3)菌体外からエレクトロポレーションでTfoRを導入した場合,4)菌体外からTfoRを加えた場合に,CmS/SucRコロニーの出現率を調べる。特に,1)と2)で検出感度を詳細に解析する。また,この系をベースにして様々なON型rncRNA検出系を再構築し,菌体間での伝達性を有するものをスクリーニングする。最終的にはスクリーニングされたRNAに蛍光アプタマーを融合し,蛍光顕微鏡での可視化を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度はコレラ菌におけるRNAの検出系を構築し,本年度はその細菌間伝達性の評価を行う予定であった。しかしながら,検出系のバックグラウンドが予想以上に高く,年度内に評価を行うことが困難となった。そこで検出系を再構築し,理想的な評価を行う上で期間延長を申請したため。
|
次年度使用額の使用計画 |
引き続いて基本的な実験操作(核酸,蛋白質などの取り扱い,細菌の培養等)に必要な酵素類・キット類もしくはプラスチック製品を購入する。また,研究成果を発表するための経費(国内の学会等に参加するための費用)として使用する予定である。
|