研究課題
B型肝炎ウイルス(HBV)ゲノムの複製量を反映してGFP蛍光を発する細胞培養系が構築できれば、その複製を特異的に阻止する薬剤を極めて効率的に同定することができる。この蛍光発光を用いる方法は簡便かつ定量的であり、現在行われているHBV薬剤のスクリーニングより優れていると考えられる。しかし(1)HBVゲノムには外来配列を組み込める場所がない(2)厳密なサイズ制限がある、という二つの極めて難しい問題がある。HBVゲノムではpreS蛋白をコードするDNA領域は1塩基ずれたオーバーラップフレームで、複製に必要な逆転写酵素polのスペーサードメインをコードしている。このpreS蛋白がコードされている領域で、preSの代わりにα-Creまたはβ-Creという外来蛋白を、polのフレームを温存しながら発現させる塩基配列DNAを用いる。このようにすれば外来遺伝子であるα-Creあるいはβ-Creを特定に場所に組み込むのではなくpol遺伝子と完全にオーバーラップさせる事により回避することができると考えられる。(2)のサイズ制限についてはGFP遺伝子を間接的に制御発現させるCre遺伝子をその前半部分(α-Cre)と後半部分(β-Cre)に分ける事により(half-Cre)、組み込むサイズを約半分にすることで解決できると思われる。このα-Cre 発現HBVゲノムが複製すると、産生されたα-CreはHBV外部からtransfectionあるいはウイルスベクターで供給されるβ-Creと会合するだけでCre活性を示し(α相補)、その外部上のGFP発現をONにすることができる。またこの組み合わせを逆にすることも考えられる。平成26年度はこのようなhalf-Creを持つHBVゲノムを複数作製し、その効果の検討を開始した。
2: おおむね順調に進展している
α-Cre 発現HBVゲノムが複製すると、産生されたα-Creは外部のβ-Creと会合してCre活性を示し、外部のGFP発現をONにすることができると考えられる。しかしたとえフレームをオーバーラップさせてサイズの問題を解決してもpolのスペーサードメインのアミノ酸配列は大きく変わってしまうため、half-Creは複数設計しその中で効果の高いものを同定する必要がある。しかも当然のことであるがα-Creとβ-Creを会合させるα-相補で得られるCre活性は本来のCre活性よりも低いため、コドンをヒト型化することにより、その実質活性を高める必要がある。これらの条件全てを満たす設計は非常に難しく、1種類では目的通り進むとは限らないので、これらを複数作製してから比較実験を行う必要がある。平成26年度はこのようにして設計された多種類のhalf-Creを合成し、polのフレームを温存したHBVゲノム上でpolのスペーサードメインと効率よく置き換えることのできるカセットゲノムを多数作製した。transfectionによりゲノム複製可能なhalf-Cre HBVゲノムを選び出す作業を行っている。
平成27年度にはこのように多数作製されたhalf-Cre発現HBVが実際に同時transfectionあるいは同時感染したもう一方のhalf-CreおよびCre によりGFP発現をONにすることを確認し、作製した多数のHBVゲノムについて、有効な薬剤のスクリーニングに使用できるHBVゲノムの構築をtransfectionおよびウイルスベクターを用いて選び出す。その上で既存の抗HBV薬剤を陽性コントロールとして、最初の目的である蛍光強度を用いた抗HBV薬剤伸のクリーニングに有用であるかの結論を出す予定である。
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