研究課題
ストレス顆粒はウイルス感染によって一過性に形成されるRNAを含む複合体であり、インターフェロン産生を含む多様な抗ウイルス作用に重要な役割を果たしている。研究代表者は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の癌蛋白Taxに結合する宿主因子としてUSP10を同定した。USP10はストレス顆粒に局在し、酸化ストレスによる活性酸素の産生と活性酸素に依存したアポトーシスを抑制した。一方で、TaxはUSP10と結合することによってストレス顆粒の形成を抑制し、活性酸素の産生を上昇させ、HTLV-1感染細胞にアポトーシスを誘導した。USP10のストレス顆粒形成における機能について次の結果を得た。1,亜ヒ酸によるストレス顆粒形成能は、USP10をノックダウンすると低下したが、USP10を過剰発現しても低下した。従って、USP10は、ストレス顆粒形成において正と負の両方の作用を持つことが示された。2,USP10の変異体を用いて、ストレス顆粒形成の抑制に働くUSP10の機能領域を検討したところ、USP10のN末端領域が関与することが示された。このN末端領域にはG3BP1との結合領域が存在することから、USP10は、G3BP1との結合を介して、ストレス顆粒の形成を抑制することが示唆された。3,Taxは細胞に発現するとオートファゴゾームの形成を誘導することが示された。Taxの変異体を用いた解析は、このオートファゴゾームの形成にTaxによるNF-kBの活性化が関与することを示した。4,USP10と複合体を形成する新規のRasGAP(Ras GTPase activating protein)蛋白としてRASAL3を同定した。5,T細胞特異的なUSP10ノックアウトマウスを樹立した。
2: おおむね順調に進展している
本年度の成果は、ウイルス感染に対する自然免疫におけるストレス顆粒およびUSP10の新たな機能と意義を解明したものであり、おおむね順調に進展していると評価した。
HTLV-1感染細胞とHTLV-1非感染細胞を共培養することによりHTLV-1の感染を調べることが出来る。この系を用いて、HTLV-1感染における、USP10とストレス顆粒および活性酸素の意義を明らかにする。TaxとUSP10の発現ベクターおよびUSP10のノックダウン細胞を用いて、Taxがストレス顆粒形成を抑制する分子機構を明らかにする。T細胞特異的なUSP10ノックアウトマウスを用いて、免疫応答におけるUSP10の機能を調べる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) 備考 (2件)
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