研究課題
C型肝炎ウイルス(HCV)ゲノムは細胞質内の膜構造体で複製するが、複製の場へATPが供給されるしくみとして、1)HCV複製複合体とミトコンドリアとの接着部位を介しミトコンドリアから供給、2)HCV複製複合体におけるATP新生、の可能性を考えた。仮説1)を検証するため、HCVサブゲノムにATeamを導入したHCV-ATeamを導入した細胞を用いて、FRETシグナル測定による細胞内のATPレベル解析と同時にMitoTrackerの添加によってミトコンドリア標識を行った。その結果、細胞質内で高ATPレベルを示すドット状シグナルが高い頻度でミトコンドリアに隣接して存在することが示された。一方、仮説2)の可能性を検証するため、ATP産生また維持に働くcreatine kinase B (CKB)の発現抑制、機能阻害がHCV複製複合体でのATPレベルに影響しうるかを調べた。CKBノックダウンまたはCKB阻害剤Cyclocreatine添加によってHCV RNA複製の低下は認められるものの、複製複合体でのATPレベルが選択的に低下する傾向は観察されなかった。以上の結果より、HCVの生活環制御には、想定した二仮説のうち仮説1)の機構が関与する可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
可能性の高い作業仮説が見出されており、初年度の研究目的は概ね達成された。しかしながら、siRNAによるノックダウン効果が不十分であったため、ミトコンドリア融合因子の発現抑制実験が当初目的に十分には達していない。
ミトコンドリア融合関連因子の発現抑制系を最適化するため、ゲノム編集技術を利用して各mitofusin等をノックアウトした細胞を作製する。これにより、HCV複製複合体とミトコンドリア膜との相互作用様式、HCV複製の場へのATP供給の実態の解析が進むことが期待される。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件)
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