研究課題
ウイルスに対する自然免疫応答は、宿主細胞に感染したウイルスを細胞内のセンサー分子により認識することで開始される。本研究は、インフルエンザウイルスやボルナウイルスなどの細胞核で増殖するRNAウイルスがどのように核内で認識され、細胞の防御反応が惹起されるのかを明らかにすることを目的に行われた。昨年度までにボルナウイルスのP蛋白質と直接結合する宿主因子であるHMGB1が、核内ウイルスセンサーであるIFI16とも相互作用していることを明らかにし、IFI16をノックダウンさせた細胞では、ボルナウイルスの複製効率が上昇していることを明らかにした。また、IFI16欠損細胞を作製し、この欠損細胞中でのボルナウイルスの複製が上昇することを明らかにしている。そこで本年度は、ボルナウイルスと同じく核内増殖するRNAウイルスであるインフルエンザウイルスの感染がIFI16に認識されるかの解析を行った。shRNAを用いてIFI16をノックダウンさせた細胞を作製し、インフルエンザウイルスの感染を行った。その結果、ノックダウン細胞ではインフルエンザウイルス増殖が若干上昇することが明らかとなった。さらに、核内から細胞質への移行能力を欠損している組換えインフルエンザウイルスを用いて同様の解析を行ったところ、細胞質への移行能力を持たないウイルスではIFI16欠損による顕著な増殖効率の上昇が確認された。以上の結果より、IFI16は核内におけるRNAウイルスセンサーであることが強く示唆された。
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