研究実績の概要 |
高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1のヒトへの感染が、タイ王国においても2004年に起こり、25名が感染し、うち17名が死亡した。鳥インフルエンザウイルスが細胞に侵入する際に使用するレセプターは、シアル酸α2-3ガラクトース糖鎖(SAα2,3Gal: 鳥型レセプター)であるが、ヒトインフルエンザウイルスはシアル酸α2-6ガラクトース糖鎖(SAα2,6Gal: ヒト型レセプター)により強い親和性を示す。感染者から分離されたH5N1ウイルスのほとんどは鳥から分離されたH5N1と同様に鳥型レセプターに強い親和性を示すため、なぜ、これらの感染者がH5N1ウイルスに感染し得たかは明らかではない。マヒドン大学医学部シリラ病院のPilaipan Puthavathana教授らによって樹立された4名のH5N1ウイルス感染生存者および10名の非感染者の不死化B細胞からヒトゲノムDNAを常法で抽出し、Illumina社のNextera custum enrichment kitを用いて8種類のシアル酸転移酵素遺伝子(ST3GAL1-6とST6GAL1,2)の全長領域を濃縮し、Illumina社の次世代シーケンサーMiSeqを用いて塩基配列を決定した。配列が読めなかったギャップは、ST3GAL3遺伝子中に1kb、ST6GAL1遺伝子中に5kbに渡って存在し、ST3GAL3については別途、PCRprimerを設定して遺伝子配列を決定することができたが、ST6GAL1については、まだ増幅が出来ていない。統計学的に有意差がある一塩基多型は30カ所ほどあったが、ST3GAL2, ST3GAL5, ST6GAL2には該当する多型は見当たらなかった。
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