研究課題/領域番号 |
26670228
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
福山 英啓 独立行政法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 上級研究員 (70303956)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ワクチン |
研究実績の概要 |
準備期間として位置づけた本年度は、用いるアルゴリズムが、来年度以降の本格研究で行うin scilico でのペプチドスクリーニングに有用であるのかを確かめることを主眼において研究を行った。先ず、既に解かれた、様々なウイルス種と交差性中和活性をもつC179抗体とインフルエンザウイルスHA抗原との抗原抗体複合体の構造から、抗体が結合するHA抗原部位に似せた直線性のペプチドを任意に8個作り、そのペプチドと抗体との親和性を調べた。MD(Molecular Dynamics)をベースにアルゴリズムをもちいて理論値を、Surface Plasmon Resonance法を用いて生化学的手法により実測値を計測し、その相関性をみた。理論値と実測値に高い相関が見られたことから、我々が用いるアルゴリズムで、スクリーニングを行うこが実現可能であることを示唆した。一方、NMRを用いた、ペプチドー抗体複合体の構造解析は、予想に反して、困難な状況にある。結合している像が、見えないことから、NMRの計測時の溶液中で結合がしにくい、または、分子量があまりにも異なることから、シグナルを得にくいと考えられる。この問題を、解決すべく、現在、より小さな抗体結合部位を残した形の、C179 scFvおよびFabを作成している。また、in silicoでのスクリーニングでC179抗体に結合するものが一つも見つからなかった場合を想定し、ファージディスプレイ法により、ファージライブラリーからC179抗体に結合するペプチドを3つ選出した。 我々が用いるアルゴリズムでは、ランダムにアミノ酸置換し、アルゴリズムで算出した理論値をもとに、さらにアミノ酸置換を行い、より親和性の高いものを生み出す方法をとっている。現在、予定通り、この作業に入った。理論上は、アミノ酸組み合わせから、10の10乗ほどの候補が計算の対象となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画通り、初年度の研究進展はほぼ順調であった。ただ、構造解析については、再検討が必要である。ペプチドー抗体複合体の構造情報は、今後、より精度の高い、アルゴリズムを開発するためには、重要なポイントとなるため、次年度も継続し、問題を解決していく努力をしていく。ただ、C179抗体に結合するペプチドがいくつか見つかっており、理論値と実測値に相関があることは、主軸の目標到達には至っていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度には、実際に、このアルゴリズムを用いて、in scilicoのスクリーニングを行う予定である。最終的には、理論値で高い値を示す上位300ほどのペプチドについて、先ずは、簡易なELISA法を用いて、実際のC179との結合能について調べる。結合したものの中から、いくつか選び、KLH等のキャリアタンパクとペプチドを結合させ、マウスに免疫し、様々なインフルエンザウイルス株を用いて、免疫したマウス血清中の中和活性を計測、人工ペプチドの万能ワクチンとしての可能性を検討する。その後、高い中和活性を持つ人工ペプチドを用いて、免疫し、実際に様々なウイルスをこれらのマウスに感染し、その予防効果を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ペプチドと抗体の結合をみる生化学の研究が順調に進み、予定していた物品ペプチドの購入が少量ですんだため。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費として使用予定。
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