研究課題
26年度は血小板と単球の相互作用から抗炎症につながる分子経路をマウスモデル系およびヒト末梢血由来単球および単球系株細胞を用いて同定することを進めた。A)モデル系としてのマウス単球・マクロファージ上の抗炎症シグナル惹起分子の同定とシグナル解析:これまで,『ヒト血小板+抗血小板IgG+末梢血単球』の極めて単純なin vitro系において,IgGの有無によりLPS刺激で誘導されるIL-6産生抑制,IL-10亢進が見られることを観察しており,さらにヒト単球の代わりにマウス骨髄単球や骨髄誘導培養マクロファージを用いることで同様の抗炎症性サイトカインIL-10の産生亢進が起こることも確認した。マウスのモデル系においてこれが単球上のどのような分子により起動しているのかを同定したところ,活性化型Fcレセプターの共通シグナルサブユニットであるFcRγが欠損するとこのIL-10産生亢進が消失する知見を得た。またFcγRIIBやFcγRIII欠損マウス由来の細胞を用いることで,FcγRIIIがこの経路を仲介することを同定した。さらにIgGのフラグメント化によりFc部分が必要であることから,本経路には活性化型FcγRIIIが起点となることを証明した。B)ヒト単球表面上の標的Fcレセプター分子の同定を試み,Inflammatory単球およびResidential単球いずれにも発現するFcレセプターであるFcγRIIAが貢献していることを,それぞれのブロック抗体IV.3を用いて実証した。これらの結果をまとめ,BMC Immunol誌に論文を発表した(謝辞記入あり)。C)27年度はヒト自然抗体のプールであるγグロブリン製剤の有効性がこの新しいIL-10産生経路に貢献するか否か,および血小板上に発現する単球との相互作用に寄与する分子の同定について検討する計画である。
2: おおむね順調に進展している
モデル系としてのマウス単球・マクロファージ上の抗炎症シグナル惹起分子の同定とシグナル解析においてこれが単球上のどのような分子により起動しているのかを検討し,活性化型Fcレセプターの共通シグナルサブユニットであるFcRγであることを示した。またFcγRIIIがこの経路を仲介することを同定した。ヒト単球においてはFcγRIIAがこれに相当する機能を果たすことを実証した。これらの結果をまとめ,BMC Immunol誌にすでに論文を発表した(謝辞記入あり)。以上のように,計画した研究項目については計画よりも速やかな進捗を得て国際的免疫学雑誌に論文発表を既に行っており,まだ着手していないγグロブリン製剤の有効性の検討,および血小板上,単球上の補助因子の探索についても平成27年度に順調に進める計画であるため期待どおりの成果を得たと判断した。
27年度はヒト自然抗体のプールであるγグロブリン製剤の有効性がこの新しいIL-10産生経路に貢献するか否か,および血小板上に発現する単球との相互作用に寄与する分子の同定について検討する計画である。本研究を通じて製薬企業と協働するなど,疾患治療への道筋も探索する。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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