研究課題/領域番号 |
26670233
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
名川 文清 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (10241233)
|
研究分担者 |
大島 健志朗 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (40537411)
高橋 宜聖 国立感染症研究所, 免疫部, 室長 (60311403)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 獲得免疫系 / 無顎類 / 抗原受容体 / VLR / 遺伝子再編成 / 腸内細菌叢 / 進化 |
研究実績の概要 |
獲得免疫系を有する最も下等な生物は、脊椎動物のうち最も下等なヤツメウナギやヌタウナギなどの無顎類である。無顎類は、イムノグロブリン型の抗原受容体ではなくLRRからなるVLRを抗原受容体として利用しており、V(D)J組換えとは異なる遺伝子再編成により多様な抗原受容体 (~100兆種類)を創り出している。現在のところ、無顎類には3種類のVLR (VLRA、VLRB、VLRC) があり、VLRA/VLRCを発現する細胞は哺乳類などのT細胞に、VLRBを発現する細胞はB細胞に相当すると考えられている。抗原受容体の構造は全く異なるものの、リンパ細胞の分化や機能に関しては、無顎類とほ乳類とでかなり似ていることが明らかになりつつある。 本研究課題では、脊椎動物のうち最も下等な無顎類における腸内細菌叢を解析し、腸内細菌と獲得免疫系との関係を、免疫系の起源と進化の観点から解明することを目指している。ヒトの腸内細菌叢が免疫系の構築や機能に重要な役割を果たすことが近年明らかになってきたが、その進化的起源については現在のところ不明である。ヤツメウナギやヌタウナギなどの無顎類は獲得免疫系を有する最も下等な生物であり、イムノグロブリン型の抗原受容体ではなくVLRを抗原受容体として用いる原始的な獲得免疫系を有している。本研究課題では、無顎類の腸内細菌叢を明らかにし、獲得免疫系との関係を明らかにすることを目指している。 本年度は、免疫系の構築や機能を検討するに当たって、重要な指標となる、最近同定されたヌタウナギのVLRA遺伝子を多数単離し、その配列を決定した。また、VLRC遺伝子に関しては、遺伝子再編成の指標となる部分再編成体を多数単離し、VLR遺伝子再編の仕組みについて新たなモデルを提示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
免疫系の構築や機能を検討するに当たって重要な指標となるヌタウナギのVLRA遺伝子の単離と配列決定、また、VLRC遺伝子に関しては、遺伝子再編成の指標となる部分再編成体の単離と解析を行った。その結果、VLR遺伝子再編の仕組みに関する極めて興味深い結果が得られた。これについて、急遽論文を作成することにし、論文執筆に関連する作業に注力したのがその理由である。
|
今後の研究の推進方策 |
1)ヤツメウナギとヌタウナギの腸から腸内細菌を採取し、DNAを抽出する。抽出したDNAを次世代シーケンサーにより解析し、どのような菌がどのような割合で存在しているか、またどのような遺伝子が含まれているかをメタゲノム解析で明らかにする。 2)ヤツメウナギに関しては人工授精を行い、無菌の個体を作出することを試みる。無菌の個体において、免疫系の組織やリンパ細胞の分化・機能がどのような影響を受けるかを解析する。 3)上記で得られた無菌の個体に、培養した腸内細菌を投与し免疫系に対する影響を解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
免疫系の構築や機能を検討するに当たって重要な指標となるヌタウナギのVLRA遺伝子の単離と配列決定、また、VLRC遺伝子に関しては、遺伝子再編成の指標となる部分再編成体の単離により、VLR遺伝子再編の仕組みに関する極めて興味深い結果が得られた。この結果について論文を作成するのに注力した結果、実験のための使用額が予定より少なくなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
ヤツメウナギとヌタウナギの腸から採取した腸内細菌のDNAを次世代シーケンサーにより解析する予定である。
|