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2014 年度 実施状況報告書

腫瘍局所の免疫疲弊解除研究

研究課題

研究課題/領域番号 26670237
研究機関岡山大学

研究代表者

鵜殿 平一郎  岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50260659)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード免疫疲弊 / メトホルミン / エフェクター・メモリー / アポトーシス / サイトカイン / AMPK / CD8T細胞 / 腫瘍微小環境
研究実績の概要

腫瘍塊局所のT細胞疲弊を解除することが、今後の癌治療に不可欠の時代に突入しようとしている。我々は、既存の低分子化合物メトホルミンを用いたT細胞の疲弊解除法を見いだした。
増大する腫瘍塊の中には、腫瘍浸潤CD8T(CD8 TIL)はセントラル・メモリーT細胞(TCM)として存在している。TCMのサイトカイン産生能は限定的であり、その抗腫瘍活性は低いと考えられる。一方、メトホルミン服用によりTCMは減少し、エフェクター・メモリーT細胞(TEM)さらにエフェクターT細胞(Teff)が増加する。TEMおよびTeffのサイトカイン産生能は高く、その抗腫瘍活性は高いと考えられる。事実、TEMおよびTeffが腫瘍局所に増加した場合には、腫瘍増大に歯止めがかかる。メトホルミン服用時のTEMおよびTeffのBcl2発現増加とそれに伴う活性化カスパーゼ3の減少がみられることから、アポトーシス抑制が重要と考えられる。
また、抗原特異的CD8T細胞の養子移入実験においても同様のことが観察される。即ち、移入CD8T細胞は腫瘍に浸潤しても通常ほとんどはTCMの状態であるが、メトホルミン服用ないしex vivoで予め移入CD8T細胞をメトホルミン処理しておけば、腫瘍浸潤後にTEMに分化し、抗腫瘍効果を示す。TEMとTeffは抗原刺激により複数のサイトカイン産生能(多機能性)を保持したままである。養子移入の実験では、ex vivoでCD8T細胞のメトホルミン処理時にAMPK阻害剤(compound C)を加えると、一連の事象は全て消失する。即ち、AMPK依存性である。これらの実験結果は、誌上に発表した(PNAS10;112(6):1809-14, 2015)。また特許出願を行なった(特願2014-166593免疫評価方法とその評価された免疫活性化剤 H26.8.19 鵜殿平一郎、榮川伸吾、豊岡伸一)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

論文が受理され誌上発表がなされたこと、及び1件の特許出願ができたことがその根拠である。

今後の研究の推進方策

メトホルミンによるCD8T細胞の活性化の分子メカニズム解明のためには、AMPK活性化、IRF4発現、解糖系と酸化的リン酸化、オートファジー機能に焦点を当てて進める事も必要であると考える。IRF4が記憶T細胞への分化に必須であること(Nature Immunology 14:1155-1165. 2013)、AMPKの活性化がオートファジーを誘導すること(Nature Cell Biology 13:132-141. 2011)、AMPK活性化とIRF4発現レベルが相関する可能性(Diabetes, Obesity and Metabolism 13:1097-1104, 2011)などが、本研究の方向性をサポートする。また、養子移入実験は極めて有用な手段であり、compound Cと同様に様々な阻害剤を用いた実験に応用可能である。従って、メトホルミンと各種阻害剤で処理したCD8T細胞を養子移入し、浸潤後のTEM分化を解析する。阻害剤としては、mTORC阻害剤(ラパマイシン、mTOR経路はAMPK活性化で抑制される)、HIF1阻害剤(解糖系阻害)、酸化的リン酸化阻害剤、オートファジー阻害剤(3MA)などを使用することが考えられる。さらに、移入後経時的にAMPKリン酸化、IRF4発現レベル、グルコース取り込み活性、オートファジー活性をTCM,TEM,TEffに分けてフローサイトメトリー解析することも必要である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Immune-mediated anti-tumor effect by type 2 diabetes drug, metformin.2015

    • 著者名/発表者名
      Eikawa S, Nishida M, Mizukami S, Yamazaki C, Nakayama E and Udono H.
    • 雑誌名

      Proc. Natl. Acad. Sci. USA

      巻: 10 ページ: 1809-1814

    • DOI

      10.1073/pnas.1417636112.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] HSP90α plays an important role in piRNA biogenesis and retrotransposon repression in mouse.2014

    • 著者名/発表者名
      Ichiyanagi T, Ichiyanagi K, Ogawa A, Kuramochi-Miyagawa S, Nakano T, Chuma S, Sasaki H, Udono H.
    • 雑誌名

      Nucleic Acids Res.

      巻: 42 ページ: 11903-11911

    • DOI

      10.1093/nar/gku881.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] メトホルミンによる腫瘍局所の免疫疲弊解除2015

    • 著者名/発表者名
      鵜殿平一郎
    • 学会等名
      第12回日本免疫治療学研究会学術集会
    • 発表場所
      東京ガーデンパレス
    • 年月日
      2015-02-28 – 2015-02-28
    • 招待講演
  • [学会発表] エネルギーセンサーを介したストレス応答と腫瘍免疫の関わり2014

    • 著者名/発表者名
      鵜殿平一郎
    • 学会等名
      第9回臨床ストレス応答学会
    • 発表場所
      岡山大学鹿田キャンパス
    • 年月日
      2014-11-01 – 2014-11-02
    • 招待講演
  • [学会発表] メトホルミンによる腫瘍局所の免疫疲弊解除2014

    • 著者名/発表者名
      鵜殿平一郎、榮川伸吾
    • 学会等名
      第87回日本生化学会大会
    • 発表場所
      京都国際会館
    • 年月日
      2014-10-17 – 2014-10-17
    • 招待講演
  • [学会発表] Metformin-induced reversion of exhausted CD8T cells in tumor microenvironment.2014

    • 著者名/発表者名
      Udono H, Nishida M, Eikawa S.
    • 学会等名
      73rd Annual Meeting of the Japanese Cancer Association
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2014-09-25 – 2014-09-27
    • 招待講演
  • [図書] T細胞の免疫疲弊と免疫チェックポイント分子2015

    • 著者名/発表者名
      榮川伸吾、鵜殿平一郎
    • 総ページ数
      7 (62-68)
    • 出版者
      最新医学(70巻3号)
  • [産業財産権] 免疫評価方法とその評価された免疫活性化剤2014

    • 発明者名
      鵜殿平一郎、榮川伸吾、 豊岡伸一
    • 権利者名
      鵜殿平一郎、榮川伸吾、 豊岡伸一
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2014-166593
    • 出願年月日
      2014-08-19

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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