研究課題
腫瘍塊局所のT細胞疲弊を解除することが、今後の癌治療に不可欠の時代に突入しようとしている。我々は、既存の低分子化合物メトホルミンを用いたT細胞の疲弊解除法を見いだした。増大する腫瘍塊の中には、腫瘍浸潤CD8T(CD8 TIL)はセントラル・メモリーT細胞(TCM)として存在している。TCMのサイトカイン産生能は限定的であり、その抗腫瘍活性は低いと考えられた。一方、メトホルミン服用によりTCMは減少し、エフェクター・メモリーT細胞(TEM)さらにエフェクターT細胞(Teff)が増加した。TEMおよびTeffでは解糖系の亢進が認められ、サイトカイン産生能は高く、その抗腫瘍活性は高いと考えられた。メトホルミン服用時のTEMおよびTeffのBcl2発現増加とそれに伴う活性化カスパーゼ3の減少がみられることから、アポトーシス抑制が重要と考えられた。また、抗原特異的CD8T細胞の養子移入実験においても同様のことが観察された。即ち、移入CD8T細胞は腫瘍に浸潤してもTCMの状態であるが、メトホルミン服用ないしex vivoで予め移入CD8T細胞をメトホルミン処理しておけば、腫瘍浸潤後にTEMに分化し、抗腫瘍効果を示した。TEMとTeffは抗原刺激により多機能性を保持したままであった。養子移入の実験では、ex vivoでCD8T細胞のメトホルミン処理時にAMPK阻害剤(compound C)或いはmTORC1阻害剤であるラパマイシンを加えると、一連の事象は全て消失した。これらの実験結果は、誌上に発表した(PNAS10;112(6):1809-14, 2015)。また特許出願を行なった(特願2014-166593免疫評価方法とその評価された免疫活性化剤 H26.8.19 鵜殿平一郎、榮川伸吾、豊岡伸一)。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 1件、 招待講演 12件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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