研究課題
免疫応答の過程で胚中心B細胞に免疫グロブリン(Ig)遺伝子のV領域に体細胞突然変異(SHM)が蓄積され、その結果、抗原受容体と抗体の抗原親和性が多様化する。SHMとクラススイッチ組換え(CSR)の誘導にはシチジン脱アミノ化酵素AIDが必須であるが、in vitroで活性化されたB細胞にもAIDが発現しCSRは起こるがSHMは起こらないので、胚中心B細胞には特有のSHM誘導能が存在すると考えられた。私たちが確立したiGB細胞培養系では、B細胞が著しく増殖して胚中心B細胞様のiGB細胞となり、CSRを起こすがSHMはほとんど起こらない。iGB細胞にBcl-6を強制発現させてフィーダー細胞とIL-21存在下で長期に培養を続けても同様であった。一方、iGB細胞をマウスに移入すると、記憶B細胞様のiMB細胞に分化し、二次リンパ組織に維持される。このiMB細胞をiGB細胞と同様にBcl-6導入により長期培養した細胞(これをiMGB細胞と呼ぶ)では高率にSHMが生じることが分かった。よって、iGB細胞はin vivoにおいてSHM誘導能を獲得したと考えられた。このSHM誘導能の実態を明らかにすることが本研究の目的である。本年度の研究から以下のことが明らかになった。1.iMB細胞をソーティングする前、あるいは、培養中に抗原受容体を刺激した場合にのみ、作成したiMGB細胞で高率にSHMが生じることが分かった。2.形質細胞分化のマスター制御因子であるBlimp1の欠損マウスのB細胞から作成したiMGB細胞は野生型マウスに比べて、2倍以上の変異頻度を示した。3.iMGB細胞におけるSHM頻度の増加は長期培養中に頭打ちとなった。その原因は、変異を起こさないクローンの増加にあった。変異を蓄積したクローンとそうでないクローンを比較すると、前者では核内のAIDタンパク量が多かった。よって、AIDの核内保持を制御する機構がSHM効率に大きな影響を与えていると思われる。
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