本研究では、自己免疫傾向にあるSpecial AT-rich binding protein (SATB1)遺伝子欠損マウスが実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental autoimmune encephalomyelitis : EAE)抵抗性であることに着目し、免疫寛容の未知の分子基盤の解明を目指した。 平成26年度は、野生型またはVav-ΔSATB1マウス(血球系細胞特異的にSATB1遺伝子発現を欠損するコンディショナルノックアウトマウス)に、EAE発症後の野生型マウス由来リンパ節細胞の養子移入によるEAEの誘導を試み、Myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)ペプチド特異的に反応するエフェクターT細胞が適量存在すれば、Vav-ΔSATB1マウスにおいても、EAEが発症することが明らかになった。 平成27年度は、前年度、施設空調改修工事の都合でマウスの交配が遅れたため、マウスを交配し数を増やすことから始めた。EAEまたは眼神経炎(Optic neuritis : ON)を自然発症するMOG特異的T細胞レセプタートランスジェニックマウス(2D2)とVav-ΔSATB1マウスの交配は順調に進み、仔マウスが成熟後、発症病態を観察した。その結果2D2-Vav-ΔSATB1マウスは、野生型2D2マウスとは異なり、Vav-ΔSATB1マウス同様にEAEまたは、ONを発症せず、抵抗性であることが明らかとなった。タモキシフェン投与により、SATB1遺伝子発現を制御できるER-Cre-ΔSATB1マウスと2D2マウスとの交配で得られたマウスについては、現在末梢CD4陽性T細胞をRAG2ノックアウトマウスに移入した後、タモキシフェン処理を行い経過を観察中である。
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