研究課題
現在、抗原を飲ませることで腸管や体内での免疫応答を誘導しようとする経口ワクチンの開発が進められており、感染症などに対する次世代ワクチンとして期待されている。従来のワクチンと同様、粘膜ワクチンにおいても免疫の記憶(メモリー)を誘導することが重要である。これまでの経口ワクチンの開発研究におけるワクチン抗原に対する免疫応答の解析から、粘膜組織での生体防御を担う主要エフェクター分子として機能するIgA抗体においても、メモリー反応は誘導されていることが示されているが、その誘導、維持に関わる機序は未解明である。本年度は、免疫の誘導や活性化、維持に関わることが近年示されているエネルギー代謝に焦点を当て、IgAメモリー応答につながるナイーブB細胞からの分化に伴うエネルギー代謝に関わる研究を遂行した。パイエル板からナイーブB細胞を、腸管の絨毛組織からIgA抗体産生細胞をそれぞれ分離し、質量分析を用いたメタボローム解析を行った。その結果、ナイーブB細胞がクエン酸回路依存的にエネルギー産生しているのに対し、IgA抗体産生細胞は解糖系へとシフトしていることが判明した。これらのエネルギー代謝と相関し、クエン酸回路に必須のビタミンであるビタミンB1を欠乏したマウスにおいては、ナイーブB細胞が減少し、その結果、経口ワクチンに対するIgA抗体産生応答が減弱することが判明した。これらのことからIgA抗体のメモリー応答に続く分化過程においてエネルギー代謝の変化が起こること、それと連動しエネルギー代謝に必要なビタミンB1に対する依存性も変化することが判明した。
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http://www.nibio.go.jp/vaccine_material_project/index.html