研究課題/領域番号 |
26670246
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
谷口 晋一 鳥取大学, 医学部, 教授 (30304207)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 地域医療 / 生態学 |
研究実績の概要 |
鳥取県日野郡江府町(人口3212人、高齢化率42.1%)において平成17年度から継続している「鳥取-江府スタデイ」について、初期年度の生活習慣病リスクに関するデータならびにその後9年間の追跡データを検討した。平成17年度については、この地域がもともと脳卒中死亡率の高い地域であり、鳥取県内で唯一高医療費指定地区になった経緯から、高血圧・脂質異常・肥満・糖尿病などのリスク要因を検討した。さらに動脈硬化リスクの高いと考えられる群には、75g経口糖負荷試験をおこない軽度の耐糖能異常も検出した。 今回の研究では、住民の生活環境も健康管理の重要な因子と考えられたため、居住環境や従事している作業(農作業、土木作業など)も、規定因子として繰りこんだ。平成17年度時点では、国保ベースの健診であったため受診者の平均年齢が63歳と高くメタボリック症候群は3%程度ときわめて少数であった。糖負荷試験の結果では、むしろ高血圧治療中の人に耐糖能障害が観察された。高血圧をベースに肥満というより軽度の耐糖能障害を合併する集団が、脳血管イベントのハイリスク集団ではないかと考えられた。また、スタデイ開始4年後の時点で、レセプトベースで心脳血管イベント発生率を評価したところ、11件のイベント(10件脳梗塞 1件狭心症)が観察された。その多くが死亡や介護につながる重篤なものではなかったが、初期年度に遡及してリスク要因を分析したところ、必ずしも血圧や血糖値など高いレベルのものでなく、むしろ、各リスク要因はきわめて軽度なものが多重した場合に発生しているのではないかと考えられた。 また、健康の規定要因として、この中山間地の特徴として谷別に集落が点在していること、地区公民館が各集落の社会的結び目として機能していること、生活背景として夏場の農業と冬場の運動不足などが問題となっていることが、質的な検討から抽出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のイベント追跡は、初期4年間のものであり、9年間全体でのイベント発生ならびに死亡原因と介護状況のデータを収集している。また、部分的ではあるが、初期年度でスクリーニングされた耐糖能障害を有する患者群には、国保診療所での生活習慣介入を継続しており、その介入群の追跡調査も並行して評価したいと考えている。また、このスタデイの経緯を通じて、地域の健康課題としての脳血管障害やそのリスクについて、住民への啓発度合をアンケートによる意識調査という形で明らかにしたいと考えている。 今回の生態学的アプローチという特徴から、健康を規定する多要因について、生態学で利用する因子分析の手法を用いて解析するための基礎データは十分に集まってきていると思う。
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今後の研究の推進方策 |
未だデータ取得できていない死亡原因と介護情報を取得して、生態学分析に使用するプログラムに投入して、どの初期条件が9年後時点でのイベント・死亡・介護度の上昇に寄与しているか、考察していきたい。とくに生態学的な視点からは、ひとつの主要要因により健康が規定されているのではなく、この地域の生活背景(農業中心)と環境(冬場の積雪、温度の日差など)そして健康意識(農業=運動、高血圧などリスク要因は健康障害ではないなど)の複合要因がからみあって発生しているという印象があり、この仮説をさぽーとできるような根拠を分析していきたいと考えている。また、地域医療の教育テキストは、江府町でおこなったさまざまな介入アプローチとその効果を含めて記載するように準備している。
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次年度使用額が生じた理由 |
生態学分析ソフトの購入費用が予定よりも安かったこと、ならびに、海外での地域医療関連学会の参加ができず平成27年度に持ち越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
イギリスの家庭医療関連学会への参加ならびに視察をすることに使用したい。
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