27年度までの研究では、海外の再生医療材料の採取機関を実際に訪問し情報収集することができなかったため、研究期間を延長して当該課題に取り組んだ。まず7月にNTTデータ経営研究所を訪れヒアリングを行った。当該研究所は27年度のAMED受託研究により「再生医療等の産業化促進に向けた細胞入手のための課題調査」を行っている。この中で、米国の他科材料調達事情について検討していたが、実際には採取機関のガードは極めて固く調査は難航したとのことであった。 11月にはそれまでの調査研究の経過を論文に纏めて報告した(Bio Clinica. 2016; 31(11)p57-61)。ここでは他家細胞を使用した細胞製剤について、その必要性(コスト面での期待、疾患への迅速な対応、均一のクオリティー等)を挙げ、現実的課題について、生物学的課題(生着不全、継代の限界、や感染症防止等と、それらに起因するコストの壁)と、社会的課題(入手体制の不在、ドナーのインセンティブの不足)に分けて検討した。特に後者課題に関係して、血液入手体制の歴史と現状について調査し考察を行った。 ヒアリング対象とする採取機関の選定には最後まで難航したが、漸く2月に米国のCIRMを訪問して、米国の細胞入手体制の全体像についてヒアリングすることができた。すなわち米国では、FDAへの登録、ドナーの適格性担保、およびCGTPの順守という3つのルールに従えさえすれば、プライベート機関もヒト由来細胞・組織・細胞/組織由来製品(HCT/Ps)を扱うことができる。採取機関はボランティアドナーに補償金(細胞・組織の代金ではない)を支払って細胞・組織を回収し、細胞医薬製造販売者に譲渡している。 3月の日本再生医療学会では、米国の細胞入手体制の調査も含めた3年間の研究の総括を発表するとともに、AMEDや経済産業省局 生物化学産業課にも情報提供を行った。
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