研究課題/領域番号 |
26670253
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
矢野 栄二 帝京大学, 大学院公衆衛生学研究科, 教授 (50114690)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | タバコ / たばこ産業 / たばこ事業法 / 電子タバコ / 喫煙率 / 受動喫煙 / たばこ規制枠組み条約 / がん対策 |
研究実績の概要 |
本研究は通常の自然科学的研究とは異なり、タバコの健康影響解明を超えてそれを防ぐために何が必要かということを実践的に明らかにする科学者のAdvocacy活動を含む研究である。その実施に当たっては研究代表者が委員長を務める日本学術会議脱タバコ社会の実現分科会の協力を得て行われる。初年度は取り組むべき課題の整理を行った。課題の第1は2012年6月に閣議決定された「次期がん対策推進基本計画」による喫煙率を10年間で半減して12%以下にする、という数値目標の実現のためにタバコ会社の妨害を排して何が必要かを明らかにすることである。その具体的な行程としては、世界保健機関のたばこ枠組み条約(WHO-FCTC)の日本における全面実施が相当する。特に現在の中心的課題として、罰則付きの受動喫煙防止法の制定がある。レストラン等多数の人が出入りする屋内施設内の全面禁煙はすでに世界の大勢になっており、北京も含め近年のオリンピックは全て禁煙で行われてきたが、2020年の東京オリンピック開催を控え、日本での受動喫煙防止のための飲食店を含む公共的建物内の完全実施は焦眉の課題である。 第2は同じFCTCにある、たばこ会社が学術活動のスポンサーになることの排除である。さしあたり、学術雑誌の投稿規定、学会発表等からの取り組みを目指す。 第3は電子タバコの問題点の整理分析である。いまタバコ会社は紙巻きタバコの販売減少を商品の形態を変えることで補おうと躍起になっている。電子タバコについてはタバコ成分もニコチンも含まないものもあり、タバコ規制を進めてきた人々の中でも、賛成反対さまざまな意見があり、一致を見ていない。そこで、電子タバコの利点と害についての学術的な検討と論点の整理を行う。 第4はある事業所を例に具体的に喫煙率を下げるために施設内禁煙への取り組みを実施しつつ、その行程や問題点を解析することである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者が委員長を務める日本学術会議脱タバコ社会実現分科会と協同して、具体的な活動を進めている。平成26年度は課題の整理が中心であったが、そこでの計画に基づき、平成27年度にかけて東京都条例制定提言や、具体的な事業所での禁煙推進の活動が大きく展開されはじめている。
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今後の研究の推進方策 |
たばこ規制枠組み条約第8条との関係から日本における受動喫煙規制の必要性を文書として示すとともに、東京都と特別区レベルでAdvocacy活動を行う。また同条約5.3条に関係し、タバコ業界からの学術団体や研究者個人への働きかけの防止のために関係学会の制度作りからはじめ、タバコ資金排除が学術会全体で当然となるようにするために何が必要かを検討する。また新たな問題である電子タバコについての論点整理を行う。一方事業所レベルでの禁煙推進の活動を行い、その中で生じる諸問題を整理し、他への普及を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
実際の研究を協力して行っていた学術会議脱タバコ社会の実現分科会が平成26年9月末で第23期に移行したため、研究のための集まりを約半年持つことができず、おもに代表者の文書研究と平成27年からの活動計画の策定が主となり、大きな経費を使う事態がなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
すでに前年度以来の計画に基づき、国、自治体、学会、事業所レベルそれぞれでのAdvocacy活動がスタートしており、そのための文書作成、印刷配布をはじめとした様々の活動が進行している。
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