研究課題/領域番号 |
26670256
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
江本 直也 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50160388)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 行動経済学 / 神経経済学 / 危険回避度 / リテラシー / 1型糖尿病 / 2型糖尿病 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでコントロール困難な糖尿病患者に対する効果的な治療介入法を考案するため、行動経済学的手法を用いて分析を行ってきた。すでに報告したとおり、コントロール困難な2型糖尿病は、HbA1cが同じレベルの1型糖尿病に比べて、リスクを数学的に評価して危険回避的な選択をする患者の割合が有意に低いことが明らかとなった。この結果のメカニズムとして、コントロール困難な2型糖尿病患者が危険愛好的である可能性もあるが、むしろアンケートにおける質問の意図を正しく理解して合理的判断をするリテラシー能力が低いことによる可能性が考えられた。そこで今回、同じ質問に対する回答を自由記述方式から選択肢回答方式として、合理的判断を引き出せるかどうかを検討した。当院で治療中の45歳から65歳未満の1型糖尿病患者20名、コントロール困難2型糖尿病患者30名にアンケート調査を行った。このうち1型15名、2型14名は前回の調査にも参加している。 (質問A) 半々(50%)の確率で2,000円当たるくじがあります。あなたはこのくじを、いくらなら1枚買いますか? (質問B) 百分の一の確率(1%)で10万円当たるくじがあります。あなたはこのくじを、いくらなら1枚買いますか? 前回の調査では、回答は自由記載方式であったが、今回は記載した価格から選ぶ選択式とし、選択肢に上限額を設けることにより、質問の意図がよりわかりやすくなるよう設定した。今回の選択肢から価格を選ぶ方法での数学的危険回避者は、1型は14名中9名(71%)、2型では25名中17名(68%)で自由記載方式よりも大幅に上昇し、1型と2型の有意差を認めなくなった。コントロール困難2型糖尿病では数学的リテラシー能力が劣ると考えられるが、情報提示法の工夫により、合理的判断を導くことが可能と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アンケートにおける質問の提示方法によって結果が異なってくることが判明した。それはすでに述べたように、真の危険愛好的性向ではなく、質問の意味を十分理解できていないことが原因と考えられた。そのため、大規模な調査を行う前に、50人程度の少人数で質問の形式を変えながら調査を進める必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
様々の質問形式により、回答が変わるもの、変わらないもの、また被験者によって質問の形式を変えても変わらない人、変わる人の分析がほぼ終了した。行動経済学的な質問項目はほぼ決まってきたが、今後さらに、学歴、職業、収入についての質問も加えていかなくてはならない。 こららの質問は詳細なプライバシーにかかわる問題のため、回答率が大きく低下する恐れがある。そのため質問形式を慎重に作成し、本格的調査に入る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケート調査では質問の設定の形式によって回答が異なることが判明した。そのため、質問形式を変えて、少人数の50人程度で試験的にアンケート調査をこなって詳細に検討し、新しいアンケート質問項目を整えた。そのため今年度はアンケートの人数が少なくなった。また、新しいアンケートには学歴、職業、収入についての質問を加える。この質問は詳細なプライバシーに関するものであるため、慎重に準備作業をすすめているために時間を要した。
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次年度使用額の使用計画 |
少人数(50人)のアンケート結果と過去のアンケートの比較検討が終了し、解析結果に基づいた新しいアンケートが作成した。また今回はさらに学歴、職業、収入についても質問を整え、今後数百人規模のアンケートを開始する。
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