研究課題/領域番号 |
26670257
|
研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
服部 しのぶ 藤田保健衛生大学, 保健学研究科, 准教授 (40321012)
|
研究分担者 |
菅沼 太陽 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (00328379)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 医療通訳者 / 職能 |
研究実績の概要 |
この研究の目的は、医療通訳の役割を明確にし、それに必要な能力を解明することである。平成28年度の実績は、以下の学会発表と海外事情視察である。 平成27年度に行った医療通訳者向けのアンケート「医療通訳者に必要な力について」の結果をまとめ、分析し、医学教育学会で発表した。具体的には、医療通訳を経験することで獲得できる能力を明らかにし、医療通訳者の年齢、経験、母語などがその能力に影響を与えるか否かを検討した。結果として、医療通訳者の属性によって得られる能力が異なることが示唆され、今後の医療通訳養成プログラム作成に大いに参考になると思われる。 また、この結果を「医療通訳を経験して獲得できるコンピテンス」と題して論文にまとめ、平成29年度に投稿予定である。 一方、海外事情を把握する目的で、カナダのマニトバ州ウィニペグ市の保健局を訪問した。カナダは移民を多く受け入れていることで、英語でのコミュニケーションに不自由な人に対する言語サポートが整っている。よって、そのシステムは、日本の言語サポートの制度策定にかなり参考になると思われる。現地で医療通訳の養成プログラム担当者へのインタビューや、医療通訳者が介在する診療場面も見学させてもらえ、その実際を見ることができ、医師や通訳者へのインタビューもできた。印象に残ったことは、医療通訳の養成と派遣の担当者から伺った「コミュニティ通訳として養成し、その上に司法や医療のトレーニングを重ね、現場へ出て、相互の分野で通訳者を共有している」という点である。人材の有効活用ができ大変良いシステムだと思った。 以上のアンケート結果や海外視察で得た知見を、日本の医療通訳システム策定に提言していきたいと思う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度から28年度まで、国内における医療通訳者へのアンケートを実施するために、アンケート質問紙を作成するための下準備、アンケート質問紙の作成、アンケート実施、結果の集計・分析、その発表まで順調に進めてきた。また、海外事情として先進的な取組みをしているオーストラリア、アメリカの養成プログラム体験、カナダの事情、学会で訪れたドイツの大学病院の事情を視察することができた。一方、国内事情としては、高齢化社会に対応し、医療機関の機能分化の意味合いも含めた地域包括ケアシステムが、多職種連携の中で、その定着を図る途上にある中で、外国人への医療についてはまだまだ充実しておらず、医療通訳システムを取り込むところまでは至っていない。この部分を平成29年度に少しでも進めて行きたい。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究を通して、海外視察で得た知見を日本の実情と照らし合わせると、地域によって実情が大きく異なることから、統一されたシステムや医療通訳者の質の担保の面での統一資格、のようなものの策定は、なかなか困難ではないかという印象を抱いている。平成29年度は、地域包括ケアシステムについてもう少し実情を把握し、医療通訳システムとの協働が可能になるような方策を見出したい。ただ、地域包括ケアシステムそのものがまだ発展途上であることを考慮すると、日本語に不自由な外国人を対象とする医療通訳システムをどこまで取り込めるのか、どの程度踏み込んで議論できるのかが課題になると予想される。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度実施のアンケートについて、回答者へ当初、謝礼を出す予定であったが、日本各地でwebによる無記名でのアンケートにしたことから、回答者を特定し把握することを断念し、協力要請した医療通訳団体へアンケート結果のまとめを送ることに代えたため。また、医療ツーリズムが推進されているアジア諸国の視察がまだできていないため。
|
次年度使用額の使用計画 |
海外学会への参加と医療通訳事情視察、かつ、日本国内の地域包括ケアシステムの実地視察に使用予定。
|