最終年度は、医療通訳を含むコミュニティ通訳の認知度の高まりを受けて、海外の学会でも関連テーマの発表が多くみられたので、海外での学会に参加し、医療通訳に関する情報を収集した。資格認定試験制度についても、賛否両論あり、特に、いわゆる希少言語の場合は、資格がなくても実際に通訳者としてキャリアを積んできているわけで、その制度のもとでは改めて認定試験を受験しなければいけなくなり、それに対して強い反発があった。これは、十分予想される反応であるが、どのように解決するのか今後も注目される。 同様に国内では、医療通訳の資格認定制度に向けて、関連する学会などがパブリックコメントを求めたりシンポジウムを開催したりと、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて事態が動いている印象を受けた。これらの情報を学会などに参加し収集した。すでにいくつかの団体により資格認定試験が実施されているが、学会認可の形で認定制度を設定するような動きがみられ、2018年度にはトライアルとして行われるようである。 この研究で実施したアンケートのデータを再度分析し、医療通訳者が医療通訳をすることで獲得するコンピテンスについて、医療通訳者の養成プログラムの内容に役立てるべく学会発表した。医療通訳者が日本人か外国人かにより、獲得するコンピテンスが異なる結果となり、それは養成プログラムの内容に違いを持たせ、より効果的なプログラム開発に役立ちうると確信している。 研究テーマの地域包括ケアシステムとの関連においては、通訳者の存在は必要な状況であることは認識されつつあるが、実際のシステムへの組み入れ、多職種連携の一役を担うところまでの働きかけが不十分であった。
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