研究課題/領域番号 |
26670265
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
苅谷 嘉顕 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20633168)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 医薬品副作用 / システム薬理学 |
研究実績の概要 |
癌の骨転移における骨破壊を伴う疼痛の緩和や、骨粗鬆治療に対して使用されているデノスマブは、高頻度で低カルシウム血症を生じ重篤な経過を辿るケースも報告されている。そこで、本申請研究では、この発症機構を解析を進めている。デノスマブは、抗RANKL抗体であるため、RANKL分子を発現する種々の臓器を介して副作用を生じていることが想定された。一方で、生体内におけるカルシウム恒常性は、多臓器間の連関により綿密に維持されていることが想定される。そこで、カルシウム恒常性維持に関わる分子機構とRANKL分子が関与するシグナル伝達との連関をシステム生物学的に解析することを計画し、研究を遂行している。文献検索により、RANKL分子およびカルシウムの生体内への取り込みおよび排泄を担う分子群それぞれと機能的に連関する分子群の探索、さらにその分子群に連関する分子の探索、を繰り返し行いRANKL分子とカルシウム恒常性維持にに関わる分子群との分子ネットワークを構築した。現在、このネットワークの解析を進めている。一般的なネットワークの構造解析に加え、より定量的かつ動的な挙動を解析する技術開発を進め、方法論開発に一定の目処が立ちつつある。また、解析結果を動物実験で再現するために必要となる、ヒトRANKL遺伝子を導入した遺伝子改変マウスの作出も進めており、次年度の動物実験による検証に備えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定していた研究計画については、概ね順調に進捗している。加えて、当初予定していなかったネットワーク解析法の新規技術基盤の構築も行うことに成功しつつある。この技術基盤は、本申請研究への大きく貢献するだけではなく、システム薬理学解析において広く応用できる技術であり、当初の計画以上の学術的貢献が期待できる状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の点を中心に研究を遂行する。 1.ネットワーク解析の技術基盤の確立:単純なネットワーク構造に基づく解析のみならず、新規開発している動的挙動を定量的に評価する方法論の確立する。 2.デノスマブが低カルシウム血症を惹起するキー分子機構の抽出:新規技術基盤を用いて、デノスマブにより低カルシウム血症が惹起される分子機構を定量的に予測し、どの分子、あるいは、シグナル経路が副作用発現に中心的な役割を果たすかを予測する。 3.ヒトRANKLを発現マウスを用いた低カルシウム血症モデルの作出:作出したヒトRANKLを発現するマウスにデノスマブを投与し、低カルシウム血症を惹起するか検証する。また、重篤な低カルシウム血症発現にがんへの罹患がキーファクターとなっている可能性も想定されるため、がん細胞を移植したヒトRANKL発現マウスを用い、カルシウム恒常性に与える影響を解析する。 4.構築した低カルシウムモデルにおけるメカニズム検証;新規ネットワーク解析法にて予測された分子が実際に低カルシウム血症の原因となっているを、3で構築するモデルマウスにて検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的な研究遂行のために、研究計画の実行順序および解析内容を一部変更し、ネットワーク解析技術の構築を優先した。そのため、当初予定されていた細胞培養実験や動物実験等を一部次年度へ繰り越したために、次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
上記に理由により、昨年度に遂行予定であった一部の動物実験・細胞陪乗実験を含めて本年度遂行予定である。その実験にかかるかかる費用(おもに物品費)として、次年度使用額を充てる予定である。
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