研究実績の概要 |
25人のアトピー性皮膚炎患者から同意の元で、皮膚(肘窩、背中など皮膚病変の強い部位)と鼻から綿棒で擦って細菌培養用とDNA回収用の2本を採取した。前者は通常の細菌培養検査を行い、Staphylococcusは3コロニーを純培養してDNA抽出、POT (PCR based-open reading frame typing) 法で株レベルの解析を行った。後者は直接DNA抽出し、16S rRNAの解析をMiSeq, Illumina 16S Library Preparation Workflowで行った。 16S rRNA解析の結果、門レベルでは鼻腔でActinobacteria, Firmicutesが多く、皮膚ではFirmicutes, Proteobacteriaが多かった。また、属レベルでは、鼻腔ではCorynebacterium, Staphylococcusが、皮膚ではStaphylococcus, Propionibacteriumが増えていた。皮膚のStaphylococcusのPOT法解析の結果、各患者から得られた3株のStaphylococcusは同じものが多く、また患者間では異なるPOT型が多かったが、患者内での鼻腔と皮膚では同じPOT型を示す株の組合せが多く認められた。 さらに、Staphylococcusの株レベルの解析を細菌同定用の医療機器である質量分析計2種類(MALDI-TOF-MS)で解析した。それぞれの質量分析計でのクラスター解析の結果、概ね患者内での鼻腔と皮膚では同じPOT型を示す株の組合せが多く認められた。 以上から、当初の仮説通り、アトピー性皮膚炎患者の皮膚には、環境からよりも本人の鼻などに常在している菌がリクルートされ、皮膚炎の悪化に伴い表皮のバリアが剥がれ湿度を失った皮膚には定着している場合が多いと考えられた。
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