研究課題/領域番号 |
26670283
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
黒田 直敬 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (50234612)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | キノン / 化学発光 / 活性酸素 / イムノアッセイ / 活性酸素消去剤 / ルミノール |
研究実績の概要 |
本研究では、活性酸素発生能を有するキノンと活性酸素消去剤との組合せによる新たな化学発光イムノアッセイの開発を試みる。キノンは紫外線照射により活性酸素を発生するが、このときルミノールが共存すると化学発光が生じる。この性質を利用して、キノンで標識した抗体と活性酸素消去剤で標識した抗原を用いる競合型のホモジニアスイムノアッセイが開発できると考えた。すなわち、測定対象抗原が存在せずキノン標識抗体と活性酸素消去剤で標識した抗原が結合して近接する場合はルミノールの発光は抑制されるが、測定対象抗原との競合により両者の距離が離れることで発光が回復するという原理に基づく方法である。 最初に、抗体の標識に適したキノンを探索する目的で、ルミノール誘導体存在下で紫外線を照射することで強い発光を与えるキノンのスクリーニングを行なった。スクリーニングに用いた 14 種類のキノンのうち、良好な発光を与え、かつ標識反応に利用可能なカルボニルクロリド基を有するanthraquinone-2-carbonyl chloride が標識に用いるキノンとして適していると考えられた。 次に、抗原の標識に適した化合物を探索するため、典型的な活性酸素消去剤及びその類似化合物 22 種類について、紫外線照射後のキノンの化学発光に対する阻害効果を調査した。その結果、フェノール性水酸基を有する化合物が強い発光阻害効果を示すことが明らかとなった。フェノール性水酸基を有する化合物のうち、カテコール類が特に強い発光阻害効果を示したが、これらは不安定であり容易に酸化されて性質が変化する可能性が考えられた。そこで、強い発光阻害効果を示した化合物の中でも安定性に優れ、かつ標識反応に有用な脂肪族アミンを有する tyramine が標識用活性酸素消去剤として適していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通りにキノンのスクリーニングを行った結果、紫外線照射により強い発光を与えるキノンを明らかにすることできた。さらに、強い発光を与えたキノンの中でも抗体と反応可能な官能基を有するキノンとして anthraquinone-2-carbonyl chloride を見出すことができた。また、活性酸素消去剤についても研究計画通りにスクリーニングを行った結果、フェノール性水酸基を有する化合物がキノンの化学発光に対して強い阻害効果を有することを明らかにすることができた。また、測定対象抗原の標識が可能な官能基を有する活性酸素消去剤として tyramine を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討により、最適なキノン及び活性酸素消去剤の組み合わせとしてanthraquinone-2-carbonyl chloride 及び tyramine が見出された。そこで、次年度以降の検討ではこれらの化合物を直接結合させた近接モデルを作製して発光を測定し、結合していないキノンと活性酸素消去剤の混液が与える発光と比較することで、両者の近接による発光阻害の増大を調査していく予定である。
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