研究課題
本研究では、活性酸素発生能を有するキノンと活性酸素消去剤との組合せによる化学発光阻害効果に基づく新たな化学発光イムノアッセイの開発を試みている。前年度までの検討により、キノンである 9,10-anthraquinone (AQ) に活性酸素消去剤である tyramine (TA) を直接結合させることにより、紫外線照射によって AQ から生じる活性酸素に対する TA による消去効率が向上して化学発光阻害効果が増大することが確認された。そこで本年度は、より抗原-抗体反応に近いモデルとして、アビジンとビオチンの結合を介してキノンと活性酸素消去剤を近接化させるモデルを作製した。すなわち、ビオチン化した AQ 及び TA をアビジンを介した複合体として結合させるモデルである。合成した Biotin-AQ 及び Biotin-TA をアビジンを介して結合させることでキノン及び活性酸素消去剤を近接させ、その発光強度を測定した。また、ビオチン化していない TA を添加した時の発光強度、またはアビジンを添加しない時の発光強度を測定し、両者の発光強度を比較することで近接による発光阻害効果の増大を評価した。しかしながら、結果としてアビジン-ビオチン結合によりキノンと活性酸素消去剤を近接化することで逆に発光阻害効果が減少するという予想とは反する現象が見られた。アビジン-ビオチン結合を介する近接化モデルにおいて発光阻害効果が減少した理由の一つとして、アビジンのような高分子に低分子の AQ 及び TA が結合して固定化されることで、逆に両者が十分に近接できなくなり、半減期の非常に短い活性酸素が消去剤に到達して消去される前に化学発光試薬と反応している可能性が考えられた。従って、本原理を抗原-抗体反応に応用した場合でも、アビジン-ビオチン近接モデルと同様の結果になることが予想された。
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