研究課題
最終年度は、悪性腫瘍における予後に影響を与えるような因子の解析を行った。胃消化管間質腫瘍では、PP2Aという脱リン酸化酵素の一部をなすタンパク質をコードする遺伝子であるPPP2R1Aの変異が高頻度にみられ、その変異が存在している腫瘍では基質となるタンパク質のリン酸化が亢進し、腫瘍の再発率が上がり、また生命予後が短くなるといった腫瘍の悪性度と相関することを示した(Toda-Ishii et al. Mod Pathol, 2016)。また、日本人に発生する甲状腺乳頭癌では、TERT promoter変異はBRAF変異の有無とは無関係に起こり、変異の頻度は低いが予後には強く影響を与える因子であることを見出した(Nasirden et al. Virchows Archiv, 2016)。本研究期間を通じた成果としては、残念ながら、直接の癌の早期発見に繋がるような因子の同定は本研究期間中には困難であった。しかしながら、多数例の原発不明癌の骨転移症例を用いた臨床研究において、確定診断のつく前に早期に治療を始めることの重要性を導き出した。この治療においては、denosumabという破骨細胞の分化・機能を抑制する薬剤が使われるが、同じくdenosumabが分子標的薬として使われる骨巨細胞腫において、denosumabの作用機序を初めて明らかにした(Mukaihara et al. PLOS One, 2016)。また、原発不明癌の骨転移症例においては、肺癌(腺癌)が最も多いことを見出し、これは、研究代表者らが以前に示した肺腺癌における分泌タンパクであるGalectin-4の予後予測マーカーとしての重要性との関連性が高く、今後も悪性度に関わるタンパク質発現・遺伝子変異の同定、さらには新規治療の探索へと繋げていきたい。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件)
Modern Pathology
巻: 29(11) ページ: 1424-1432
10.1038/modpathol.2016.138.
Virchows Arch
巻: 469(6) ページ: 687-696
PLOS One
巻: 11(2) ページ: e0148401
10.1371/journal.pone.0148401