研究実績の概要 |
平成27年度において、まず匂い誘発性鎮痛に対する中枢性オピオイドシステムの関与をホットプレートテストにより検証した。予備実験で匂い誘発性鎮痛を最も効率的に検出できるホットプレート温度を検証したところ、54.5℃設定で匂い誘発性鎮痛効果が最大になることが判明したため、54.5℃をホットプレートの設定温度とした。コントロール実験として生理食塩水を腹腔内投与したマウスでは、54.5℃設定のホットプレートテストにおいて、匂い分子X香気暴露により疼痛行動潜時が有意に延長していた(p = 0.0083, 独立2群t検定)。一方、μオピオイド受容体拮抗薬であるナロキソン塩酸塩を事前に腹腔内投与したマウスでは匂い分子X香気暴露による疼痛行動潜時の有意な変化は観察されなかった(p = 0.1639、独立2群t検定)。これらの結果から、匂い分子X香気誘発性鎮痛にはμオピオイド受容体を介した内在性鎮痛機構が関与することが明らかになった。また、匂い分子X香気誘発性鎮痛に関与する脳内部位を検証するため、匂い分子X香気暴露群と無臭香気暴露群で脳内の神経活性化マーカー蛋白質(c-Fos)の発現分布を免疫組織化学法を用いて比較した所、匂い分子X香気暴露により視床下部背内側核でc-Fos蛋白質の発現が著明に上昇する一方、一方視床室傍核、視床下部室傍核、中脳水道灰白質外側部、中脳水道灰白質外腹側部では発現の著明な減少が観察された。これらの結果から匂い分子X香気暴露により特定の脳領域の活性が変化し鎮痛効果が発現することが明らかになった。 これらの結果は第93回日本生理学会及び第45回米国神経科学学会で発表した。また現在これらの内容をまとめ論文を投稿・改訂作業中である。
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