研究課題
申請者らは、NMDA受容体NR2Bの1472番目のTyr残基 (Y1472) がリン酸化できないノックインマウス (Y1472F-KI) を用いてNR2BのY1472のリン酸化が神経障害性疼痛の発症維持に重要であることを明らかにしてきたが、Y1472-KIマウスを用いた予備実験でNR2BのY1472のリン酸化が掻痒にも関与することが示唆された。これまで痛覚と痒み刺激がどのように一次求心性線維を介して脊髄に伝達され、識別されるか不明であったが、ごく最近、痒みの伝達物質・経路が解明され、痒みは痛覚と明確に区別できることが判明した。本研究は申請者らがすでに確立している二光子励起顕微鏡下でのin vivoイメージングにより、掻痒と疼痛動物モデルで脊髄後角での痒みの神経回路網とその活性化機構、痛覚の伝達機構との違いを明らかにすることを目的とした。研究実績の概要1)マウス頬にアセトン-水を繰り返し塗布することにより、慢性掻痒モデルを作製し、グルタミン酸NR2Bの1472Fのリン酸化が痛み同様に痒みの発生に関与していることを明らかにした。2)クロロキンの皮下注入に伴う掻痒行動においてもグルタミン酸NR2Bの1472Fのリン酸化が慢性掻痒モデル同様に痒みの発生に関与していることを明らかにした。3)掻痒行動に伴う一次求心性線維の三叉神経路核に到達部位をc-fosの発現で明らかにした。掻痒行動が減弱しているNR2BY1472Fノックインマウスで、c-fosの発現が低下していることを明らかにした。4)掻痒行動の中継地である三叉神経路核での神経伝達物質の関与を検討するために、大槽内投与法の検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
研究実績に記載したような研究実績が上がっている。しかし、BNPが痒みの神経伝達物質であるという(Science 340:968-971 (2013) )の論文は現在、他の研究者との論争の中にある。その論文に基づいて発想した本申請書の研究計画に記載したcGMPの実験を中断し、BNPが掻痒に関与しているか確認している。
1)グルタミン酸NR2BサブタイプのY1472のリン酸化の関与を検証し、痛みと痒みの神経伝達経路の違い、相互作用を明らかにする。2)大槽内投与法を用いて、現在論争中のガストリン遊離ペプチドとBNPのどちらが掻痒に関与しているか我々の実験で解明する。3)その結果に基づいて、脊髄後角での分子イメージングに用いる蛍光タンパクを決定して、トランスジェニックマウスを作製してin vivoで解析を行う。
本研究の分子イメージングのトランスジェニックマウスで使用を予定していた作製と飼育繁殖のための費用が「現在までの達成度」で記載した理由で実験を中断したため。
分子イメージングに用いる蛍光タンパクを早急に決定して、今年度のトランスジェニックマウス作製の費用に充てたい。
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