研究課題/領域番号 |
26670294
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小倉 隆英 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10312688)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ニューロモジュレーション / 腫瘍 / 血流 / 酸素分圧 |
研究実績の概要 |
今年度はin vivo系において研究を行い、腫瘍血流を増加させるための電気刺激条件、および腫瘍血流を減少させるための電気刺激条件の詳細を検討した。 用いたマウスはC3H/HeJの7週齢メスで、腫瘍細胞はマウス扁平上皮癌株(SCC-Ⅶ)である。この癌株を細胞培養後、大腿近位の皮下に移植した。こようにして作成した担癌マウスに対し電気刺激条件を変化させながら電気刺激を行い、腫瘍内の血流変化を二次元ドップラー血流計にて計測した。電気刺激は腫瘍の体積が80~100mm3になった時点から開始した。 腫瘍移植部を支配する体制神経根部(脊髄神経後根)の電気刺激により、特定の刺激条件下で有意に移植腫瘍栄養血管の血流が増加することが確認できた。腫瘍血流の増加率は刺激なしと比較して約20%の増加であった。一方、この刺激条件とは異なる別の特定刺激条件下において、有意に腫瘍栄養血管の血流が減少することが確認できた。腫瘍血流の減少率は刺激なしと比較して約20%の減少であった。 すなわち、脊髄後根における電気刺激の刺激条件を適宜変化させることで、任意に腫瘍栄養血管の血流の増減をコントロールできるようになったことになる。このことから、研究の大目標でもある、電気刺激のニューロモジュレーション作用によって腫瘍の血流増減をコントロールし、放射線や薬剤を用いた治療期には腫瘍の血流を増加させ治療効果をアップさせ、治療が休止する治療間期には腫瘍の血流を減少させ腫瘍を兵糧攻めにするという、二つの治療サイクルをもった新しく効率的な癌治療法の実現に大きく近づくことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、研究代表者が病気療養(10月~3月)を余儀なくされ、研究が一時中断したため、当初予定の内容の多くが今年度へ持ち越しとなっていた。 今年度はそれを補うため昨年度分も含めて研究を実施したが、結果として非常に良い結果が得られたため、研究全体の進捗状況としては当初予定通りに戻った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの研究で、電気刺激を用いて腫瘍の血流を自由にコントロールすることが出来るようになった。 今後はこれに放射線照射を組合わせ、腫瘍の血流コントロールを行いながら照射した場合どの程度治療効果に差が出るのかを総合的に検討する。また、電気刺激を用いた腫瘍血流の増減は全く新しいコンセプトに基づいた癌治療法となるため、特許出願を念頭に研究を進めて行くこととした。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度研究代表者が病気療養(H26年10月~H27年3月)のため研究の一時中断を余儀なくされ、初年度予定の研究が十分に遂行できず今年度に持ち越した。この金額が相応に大きかったため、今年度も積み残しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度の研究遅れは十分に取り戻せた。今年度は最終年度として研究の総括となるため、放射線を併用した場合や、市販薬剤(高額)と併用した場合等を考慮し残額を使用したい。また、データ整理のための人件費としても若干支出し有効に活用したいと考えている。
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