昨年度までに明らかにした腫瘍血流を増加させるための電気刺激条件、および腫瘍血流を減少するための電気刺激条件を用い、腫瘍血流の増減をコントロールした。さらにこれを放射線照射と組合わせ、放射線照射による治療効果がどのように変化するかin vivo系で検討した。 用いたマウスはC3H/HeJの7週齢メス、腫瘍細胞はマウスの扁平上皮癌株(SCC-Ⅶ)である。この癌株を細胞培養後、大腿近位の皮下に移植し担癌マウスとした。電気刺激は担癌マウスのTh12~S脊髄後根をカバーするよう皮膚表面から行い、大腿近位外側に移植した腫瘍の血流の増減を制御した。血流増加刺激の50分後に5Gyの放射線照射を一回行い、照射終了後1時間経過後に血流減少刺激を一回行った。すなわち、血流増加により腫瘍の再酸素化を行って放射線を照射、その後速やかに腫瘍の血流減少を行って腫瘍を低酸素化し兵糧攻めという治療サイクルを実施した。 「具体的な治療なし」、「放射線照射のみ実施」、「今回の血流の増減と放射線照射を組合わせた新しい治療サイクル」それぞれにおける腫瘍の成長速度を比較した。その結果、放射線照射のみ実施したものよりも、血流の増減と放射線照射を組合わせた新しい治療サイクルを用いた方が、約2倍、有意に腫瘍の成長を遅くさせ、腫瘍の治療効果として有望である可能性を見出すことが出来た。 つまり、電気刺激という安価・安全で適用しやすい方法によって腫瘍の血流をコントロールし、放射線による腫瘍の制御効果を2倍に高めることに成功したといえ、がん治療に有効な方向性を与えうる成果が得られたと考える。
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