放射線治療では、治療前に撮影したCT を元に線量分布を計算し、治療に最適な照射方向や照射野形状を決める。計画通りの線量分布を実現するため、治療寝台上の患者をX 線撮像装置で撮影し、その画像が計画時CT と可能な限り一致するように患者の位置合わせを行う。この従来の方法は、画像の一致度が線量分布の一致度を反映することを前提としている。しかし、対象が人体のように剛体でない場合、画像の一致度が線量分布の一致度と同じである保障はない。本研究は、画像の一致度ではなく線量分布に基づいて位置合わせを行うことで、位置合わせ誤差を低減する新しい手法を提案する。そのための基礎的検討が本研究の目的である。 平成28年度までに、治療中に取得したコーンビームCT画像に基づいて治療期間中の臓器の位置変動を把握し、その臓器変動による線量分布への影響を解析した後,治療中に取得したコーンビームCTに基づいてビームパラメータを計画時の値から調整することで、治療中の臓器変動による線量分布悪化を低減できることを明らかにした。それと同時に、線量評価に必要となる線量計算アルゴリズムの基礎開発およびインハウスソフトウェアへの組み込みを行った。 平成29年度は、線量計算アルゴリズムの基礎開発に関し、第30回高精度放射線外部照射部会学術大会において発表するとともに、前立腺癌に対する3D-CRTにおいて、治療中の臓器変動に基づいて各治療回でリーフ形状を最適化するアルゴリズムを開発し、適応放射線治療における有用性を示した(第31回高精度放射線外部照射部会学術大会で発表)。さらに、インハウス線量計算ソフトウェアを応用し、前立腺強度変調放射線治療において、ビーム入射角度および寝台位置を最適化アルゴリズムを用いて自動的に決定することによりリーフ形状を変えずに線量分布をいかに改善できるかを解析した。その成果を第115回日本医学物理学会で発表する予定である。
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