本研究では、肺や心臓などの活動的な臓器に対するダイナミックな撮像を可能にするポテンシャルを有する超偏極MRIの高度化を視野に、高純度の固体ゼノン(Xe)の超偏極を動的核偏極(DNP)によって初めて実現するため、DNPに必要な不対電子を固体Xe中に導入するための新たな手法を提案し、その検証実験を行う。当初、少量(数%wt)のイソブタノールを混合した液体Xeに紫外線を照射し、イソブタノールの分子結合を切断し、ラディカル分子を生成するという、技術的に難しく、手間がかかる手法を構想していた。しかし、近年ボールミルによるMA法(機械的合金法)と呼ばれる手法によって異種の固体をナノメートルレベルで合金化できるようになってきたため、この方法を利用して固体Xeに直接フリーラディカルを混合する方向で研究を進めている。このため、テスト的にXeよりも安価で取り扱いも簡単なSF6の固体中の19Fの能動核偏極を行うため、SF6固体の生成、フリーラディカル化合物(TEMPOL)との混合、混合サンプル中でフリーラディカルが均一に分散したかを調べるための低温でのESR測定などを行ってきた。
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