研究課題/領域番号 |
26670298
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高田 義久 筑波大学, 数理物質系, 教授 (00134205)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | bolusの自動最適化 / bi-material bolus / 炭素イオン線 |
研究実績の概要 |
当初計画では、26年度にsingle-material bolusの自動最適設計法の開発を、27年度にbi-material bolusの自動最適設計法の開発を行う予定であったが、都合によりその順番を入れ替え、今年度は、当初計画のうち、27年度分の計画を先行して実施した。 すなわち、先ず、炭素イオン線用のbi-material bolus通過後の生物効果線量(BED)分布の高精度高速計算モデルを開発した。このモデルでは、炭素イオンが、同じ水透過厚を持つ異なる材質(サイコウッド、アルミニウム合金、真鍮)で異なる核反応確率を持つことに伴う線量分布の違いを測定に基づき求め、それを線量分布計算に取り入れることで高精度化を実現した。 次に、照射標的の内外の線量分布を最適化する炭素イオン線用のbi-material bolusの自動最適化法を開発し、それを用いて設計したbolusに対する計算によるBED予測を実測で確認し、良く一致する結果を得た。すなわち、傍脊椎腫瘍を模擬した照射標的モデルに対し、bi-material bolusの設計法として、ray-tracing法とsmearingを用いた従来の手法と、今回我々が新たに開発した自動最適化設計法で設計した2つのbolusを製作し、それらを通過した炭素イオン線が水中で作る線量分布を測定した。 いくつかの水平断面で測定した線量分布から生物効果線量(BED)で表した線量表面ヒストグラム(DSH)で評価したところ、(1) 標的内の線量分布は同程度である、(2) OAR(照射標的周辺の重要リスク臓器)の線量は最適化したbi-material bolusの方が低減できた、(3)その他の正常組織の線量分布は同程度である、(4) 計算と測定は良い一致を示した、ことが分かった。これは、bi-material bolusの自動設計が計画通りに実現されたことを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
27年度分の計画を先行して実施し、計画通りの結果を得た。 すなわち、27年度(1)で計画したBi-material bolusに対するWobbler法における線量計算モデルの確立をした。(2)で計画した傍脊椎腫瘍を模した標的モデルに対して照射標的,OAR, その他の正常組織に目標線量を与えbolus 要素の厚さを未知数として、Cycowoodと真鍮 から出来たbi-material bolus の形状を最小二乗法で求める方法で設計したbolus を製作した。比較のため従来法で設計したbi-material bolus も設計製作した。(3)これらのbolusを通過した炭素イオン線が水中で作る線量分布を測定した。(4)測定した線量分布を基に生物効果線量分布を求めて比較し、計算との良い一致を確かめ、また最適化したbi-material bolusがOARの線量を逓減できることを確認した。このようにして、当初の計画通り、炭素イオン線用に最適なbi-materialの自動設計ができることを実証し、最適自動設計により線量分布の改善ができることを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、炭素イオン線用がsingle-material bolus通過後の生物効果線量分布の高精度高速計算モデルを作って、炭素イオン線に対するsingle-material bolusの自動最適化設計ができるように研究を進める。そして、single-material bolusとbi-material bolusを通過した炭素イオン線が水中で形成する生物効果線量分布を比較して、炭素イオン線に対しても、bi-material bolusがsingle-material bolusに対して標的内の生物効果線量分布の均一性を改善できることを示す予定である。
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