炭素イオン線用のsingle-material bolus(SM bolus)通過後の生物効果線量(BED)分布の高精度高速計算モデルを開発した。このモデルでは、炭素イオンが、異なる材質で異なる核反応確率を持つことに伴う線量分布の違いを測定で求め、それを線量分布計算に取り入れることで高精度化を実現した。次に、照射標的の内外の線量分布を最適化する炭素イオン線用のSM bolusの自動最適化法を開発した。そして、傍脊椎腫瘍を模擬した照射標的モデルに対し、それを用いて設計したbolusに対するBED計算を行った。また、従来法により設計したSM bolusに対するBED計算と、昨年度行った最適化bi-material bolus(BM bolus)通過後のBED計算を行い、これらとの比較を行った。事前の予想した通り、標的内の線量均一性は最適化BM bolusの場合が最良であったが、最適化SM bolusの場合との差は小さかった。一方、OARの線量付与については最適化SM bolusの場合が最良で、最適化BM bolusよりも優位に優れていた。予測を実測で確認するため、最適化BM bolusと水等価厚が同じになるよう変換した「水等価厚換算SM bolus」と、従来法で設計したSM bolusを製作し、それらを通過した炭素イオン線が水中で作る線量分布を測定し、それからBED分布を求めた。いくつかの水平断面で測定した線量分布から生物効果線量(BED)で表した線量面積ヒストグラム(BEDSH)で評価したところ、(1) 標的内の線量分布は同程度である、(2) OAR(照射標的周辺の重要リスク臓器)の線量は「水等価厚換算SM bolus」の方が低減できた、(3)その他の正常組織の線量分布は同程度である、ことが分かった。これは、SM bolusの自動設計が計画通りに実現されたことを示している。
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