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2014 年度 実施状況報告書

超小型X線管用電子源に関する基礎研究

研究課題

研究課題/領域番号 26670302
研究機関京都医療科学大学

研究代表者

林 茂樹  京都医療科学大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90395228)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード電界放射 / 電界計算シミュレーション / タングステン / 窒化ホウ素(BN)
研究実績の概要

医療分野では100年来フィラメントを加熱した熱電子によるX線管を使用している。その為、X線管は大きな装置となる。室温で電界放射による電子を用いればX線管を小型化することが可能である。例えば、直径5mm程度のX線管が出来れば、胃カメラの様に体内からX線照射でき、X線被ばくを少なくするばかりではなく、内側からX線照射する放射線治療にも用いることができる。金属表面に高電界を印加すると、室温でもトンネル効果によって電子が放出される。これを電界放射という。電界放射そのものは100年近く前から予言されていたが、実際に電子源として使用されるようになったのは、超高真空技術や尖鋭化技術の発達により最近になってからである。しかし、医療装置としての電界放射電子源は未だ実用化されていない。本研究ではX線管の小型化を実現するため、タングステン針による尖鋭化による電界放射に関する基礎実験を行った。
以下に、この1年間で得られた研究実績の概要を示す。
(1) 通常の電解研磨により尖鋭化したタングステン針に室温で電圧印加し、F-Nプロットが直線になることから、電界放射が起こっていることを確認した。
(2) 得られたF-Nプロットより電界増強因子、先端曲率半径を求め、電界計算シミュレーションから得られた理論値と定量的な特性比較を行った。
(3) BN成膜したタングステン針からの電界放射実験を行い、BN膜が薄いと剥がれる際に先端が曲がったが、500nm厚では先端が尖鋭化されたタングステン針を得ることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

先ず予備実験として、通常の電解研磨により尖鋭化したタングステン針に室温で電圧印加し、F-Nプロットが直線になることから、電界放射が起こっていることを確認した。
電磁界解析ソフトウェアELFIN((株)エルフ社製)を使って電界計算シミュレーションを行い、実験との比較を行った。ELFINでは空間メッシュが不要な積分要素法を用い、解析式による高精度な電界計算をすることができる。タングステン針を平面陽極に垂直に配置し、陰極を接地して陽極に高電圧を印加したとき、その間の電界分布を計算し、針先端に電界が集中していることを定量的解析することができた。
絶縁性薄膜として窒化ホウ素(BN)薄膜をタングステン針上に成膜し電界放射実験を行った。BNは黒鉛とほぼ同様の六方晶系構造を持つが、黒鉛とは異なり絶縁体である。タングステン針先端をより先鋭化する目的で、このBNをイオンプレーティング法によりタングステン針の上に厚み200~500nm薄膜を成膜し、BN成膜タングステン針による電界放射の実験を行ったBNの膜厚の変化に対するタングステン針先端の尖鋭化実験で初期条件を決定し、BN厚みが500nm以上必要であることが分かった。高電界の印加によりBNが剥離された。
その結果、BN成膜タングステン針を用いて、ELFINで計算した結果、電極間距離が小さくなると電界は増加し、電極間距離を小さくすることにより電界増強因子の増加が見られ電界強度の距離依存性を確認することができた。また、SEM(走査型電子顕微鏡)によりタングステン針先端の観察を行った。BN薄膜500nm厚よりも薄いと薄膜が剥がれ、タングステン針の先端が曲がってしまうが、500nmではタングステン針先端の形状を維持して尖鋭化することが確認できた。

今後の研究の推進方策

今後は、窒化ホウ素(BN)以外の絶縁性薄膜として窒化アルミニウム(AlN)等を候補として、同様な尖鋭化実験を行い、BNとの比較や他の絶縁性薄膜の探索を行う。方法はこれまでと同様に、超高真空中でのタングステン針による電界放射実験を行い、高電界を印加した際、絶縁性薄膜の剥離に伴うタングステン先端部の尖鋭化を行い、単結晶タングステン針の作成手法の確立を目指す。
これまで主として㈱島津製作所の走査型電子顕微鏡(SEM)を使って、タングステン針の先端形状は観察していたが、より身近に使用できる京都大学・大学院工学研究科にあるSEMを使ってタングステン針の先端観測を行う予定である。また、より高倍率である透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて先端形状の観察を行い、最終目標である単結晶化したタングステン針が得られることを確認したい。TEM観察に関しては当初予定していたとおり、けいはんな学園都市(津田地区)にある㈱イオンテクノセンターにて実施する予定である。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額は「\26,380」であり、直接経費予定額「\1,000,000」に比べ少額であり、ほぼ予定通りの直接経費の進捗と考えられる。

次年度使用額の使用計画

次年度も昨年度と同じ様に、物品購入の直接経費の一部に充当する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2015

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] A novel method for formation of single crystalline tungsten nanotip and its application to high brightness electron source2015

    • 著者名/発表者名
      Shigeki Hayashi, Masashi Ono, Shinya Tomonaga, and Haruka Nakanishi
    • 学会等名
      1st International Conference on Applied Surface Science (ICASS)
    • 発表場所
      Riverside Oriental Hotel, Shanghai,China
    • 年月日
      2015-07-27 – 2015-07-30

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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